「ふぅ…終わったぁ…」
『………コイツが治療してたんだからそんなに力使わなくてもよかっただろ』
不機嫌オーラを隠しもしない(いや、これでも隠しているのかもしれない)黒燿。
原因は、リナリーのために『癒しの炎』を使ったからだ。
いやだってブックマンの治療(ちなみに黒燿が言うコイツとはブックマンのことだ)はすごいって知ってるし、すぐに目覚めるのも知ってるけど…何かリナリーためにしたかったんだもん…。
過信しているわけじゃないけれど、もしも俺が一緒に行ってればもっと怪我少なかったかもしれないしさ!!
「世羅。尽力感謝する」
道具を片付けていたはずのブックマンお礼を言われた。どうやら考え事をしていた間に片付けは終わったようだ。
慌てて返事をする。
「いっいえ。そんな大層なことしてませんしっ。こちらこそリナリーの治療ありがとうございます」
『…大層なことだろうが』
(ぼそっと言わないの!)
「治療するのは当然のこと。さて、次はアレン・ウォーカーを診にいかねば」
「あっじゃあ俺もいきま「世羅〜!!」………ラビ…」
いきなり背中に重みがかかった。こんなことをするのは一人しかいない。ラビだ。
いつ入ってきたのか気配すらわからなかった。
が、いつの間にか背後にいて抱きつかれたのである。
そんな俺らのやり取りに見向きもせず、ブックマンは一人ですたこら行ってしまった。
まぁ抱きつかれるくらいなら別にいいけど。
さっきも抱きつかれたし、何か慣れたな。
と言うことで、普通に会話を続けた。
「アレン起きたの?」
「………そうさ〜」
えっ、何その間。しかもちょっとラビが不機嫌になっているし!!
そして…――
『・・・』
不機嫌なのがもう一人。
まったくなんでラビが抱きついてくると不機嫌になるんだよ…。
とりあえず、今はアレンが心配なのでラビを優先することにした。
「じゃあアレンの所に行こっか」
「……アレンはコムイとミランダってやつの話してるからゆっくり行こうぜ」
ミランダさんか…結局会えなかったなぁ。
会ってみたかったのにっ……!!
「お〜い世羅?…また黒燿と喋ってるわけ?」
「えっ、ううん。今のはただ単に考え事してただけ」
「ふ〜ん。まっそういうことだしゆ〜っくり行こうぜ♪オレたちは関係ないんだし、かえって邪魔になるさ!」
ラビの言葉に歩調をゆるめる。
そうだよなぁ〜…俺はミランダのことは知らないって言うことになってるんだもんな……ここは邪魔しない方がいいよな…?
「そうだよな…。うん。じゃあゆっくり行こっか」
と言ってもアレンの病室とここはそんな距離がないので、ゆっくり行ってもすぐついてしまう。
「すぐついたらあれだし、遠回りしてこっか?」
「さんせー♪」
異様にご機嫌なラビ。何か楽しいことがあったんだろうか。
『毎度のことながら鈍いな…』
(?)
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