駄々っ子    [ 62/159 ]

「ボクのリナリイイィィィ!!!!!」





あぁ…物凄い勢いでコムイさんが走っていく…。
砂埃を巻き上げて(アスファルトなのに)。
普段、科学班に篭っているはずなのに、何処にあんな脚力が…。



「すごいねコムイさん…」

『…あいつ馬鹿か』

(いや、ただシスコンなだけだって)

『それを妹馬鹿と呼ぶ』

(あぁ、なるほど)




…あれ?もしかしてフォローになってなかった?





唖然としながら病院へ突進するコムイさんを見送る俺。
(いや今から俺たちも中に入るけどさ)
コムイさん、急いだってブックマンがいなきゃリナリー治療出来ないのに…





・・・





って俺一回もブックマン会話交わしてないじゃん!!


俺は視線をコムイさんが去っていった方向から、ブックマンへと向けた。
目線は少し下にずらす。


あぁ…ちっちゃいっていいね…
初めて見下ろせる人に会えたよ…(感激)




「えっと…初めまして。さっきはごたごたしていたせいで挨拶が出来なかったので…、えっと俺は「世羅殿じゃろ?」……」



―……なんつーかさすがラビとブックマン、似てるよね。
人の自己紹介を遮るあたりが!!
別にいいんだけどね、名前くらいはちょ〜っと自分で名乗りたいかな?なんて思っちゃったりしちゃったりしてるんですけど!!




「……ハイ」


最初の間はちょっとした抵抗だと思ってくれ…


「わしはブックマンをやっておる。名はない。ブックマンと呼んでくれ」

「…わかりました。俺も世羅でいいです」


そう言いながらブックマンと握手をかわす。と、背中にずしりと重みがかかった。




「ラビ〜…」

「世羅〜。んな挨拶なんかやってないで、早く中に入ろうぜ。早くしねぇとコムイに怒られるさ!」

「わかったから、重たい」


ラビを引き剥がそうと試みたが無駄に終わった。
ここ数日で自分の非力さを痛感した気がする…

時間が空いたら、筋トレしよう…。



「とりあえずどいてってば!」

「いいじゃん。スキンシップ♪スキンシップ♪」

「……はぁ…わかった。スキンシップなのはわかったから、離れて。じゃないと歩けない」

「このままでも歩けるって!」



よほど俺の反応が楽しいのかラビはにやにや笑っている。


『俺がそいつ引き剥がしてやる』

(いや、いいからっ!)


そんなラビを睨みながら(最近はなんとなく動作まで読めてきたから睨んでるってわかるんだけど)黒燿は、言葉の裏に殺気を盛り沢山に詰め込みながら言った。


―何するつもりっ!!?


「ラビ、お願いだから離れて!何でかわかんないけど黒燿がすっごく恐いんデス」


ラビだけに聞こえるように小声でそう伝える。


「何で?」

「知らないよ!」

「ふ〜ん」


そんなやり取りの中も黒燿の殺気は消えることはなくて…――


「とっとりあえずそういうことだから離れて」

「え〜」


―Σ駄々っ子かよ!?


というか俺の気のせい(であってほしい)かもしれないがラビと黒燿の間で火花がちってる気がする……ひぃ〜…



俺のこの冷や汗だらだらな心情なんてお構いなしに、離れないラビ。おまけにもっときつく抱きついてきた。



『・・・』


やばいー!!黒燿さんが何かしようとしていらっしゃるー?!!!




えぇっと…駄々をこねる子供には何て言えばいいんだっけ?!



思い出せ俺。
スーパーのお菓子コーナーでお菓子をねだる子とその子の母親の会話を思い出すんだ!
何か可笑しいって?いや、でも一番イメージに合うのがそれなんだって!

あの風景をちょっと改造すれば…っ!




―って俺、お菓子かよ!!




あぁもうっ!今は気にするな俺。思い出すことだけ考えろ。





う〜ん…






あっそうだ!!








「言うこと聞かなかったら二度とスキンシップさしてあげませんからね!!」







頭の中で黒燿がずっこけた。


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