◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「ほらほら世羅くん。いい加減に機嫌直してよ〜」
「・・・」
「世羅くぅ〜ん!!」
宥めようとしているコムイさんの言葉をスルーして、窓の外を見る。
え、何で俺が怒ってるかって?『自分で自分に聞くなよ』(放っといて)
馬車で拉致られたから☆
はい。正解!世羅君に10点!!
っていうのもぉ、あの後ぉ〜ラビと教団に着いたらぁコムイさんが待ってて〜、
俺はそれとなぁ〜く、巻き戻りの街に行けるように聞いてみたんだけどぉ〜却下されて〜、
だから内緒でぇ行こうとか考えてたらぁ〜部屋に閉じ込められたのぉ〜。
以上女子高生風でお送りしました。
『なんで女子高生なんだ…』
(なんとなく?)
『俺に聞くなよ』
(まあそれぐらい、俺の精神はヤサグレてんだって!)
ヤサグレすぎて、ささくれてる感じ?
そりゃあさ、自宅療養って言われてたけどさ…もう大丈夫なんだってば!
まぁ閉じ込められたから、しょうがなくふて寝していた訳。
んで、起きてみたらこの馬車の中。
―…ってありえないだろ!!!?拉致ですかっ?!
誘拐ですか!?夜襲ですか!?朝襲ですか!?
『…はぁ…いい加減機嫌直せよ』
(だってありえないじゃん!!普通起こすだろ?!何より俺は早く行ってあの二人を助けたかったのに…っ!!)
『もう戦いは終ってるんだからうだうだ言っててもしょうがねぇだろ』
(そうだけどさ…)
また窓の外を眺める。
後どれくらいで巻き戻りの街に着くんだろう。
斜め前の席でコムイさんがまだ騒いでいた。
ちなみに、俺の隣にブックマン(何故か俺の隣に座る座らないで、ラビとコムイさんが喧嘩したからだ)で、俺の前にラビ(何故かここでも喧嘩が起きたが、じゃんけんで勝負が決まった)で、ラビの横がコムイさんという席順になっている。
「世羅くぅ〜ん!!も〜ラビも頑張って世羅くんなだめてよ〜」
「コムイガンバレ〜」
「・・・(泣)」
ちらりと横目で二人のやりとりを盗み見る。
コムイさんは項垂れて、萎んでいる。
ラビは…――
何故かにこやかにこっちを見てます…そりゃもうキラキラオーラが出そうなくらい。
いや、イケメンにそんな凝視されると、穴に入って隠れたくなるんだけど。
目の前に居てごめんなさい的な。
えっと、俺、顔に何かついてマスカ…?
「ラビ?何…?もしかして何かついてる?」
「いや何でも?」
「?じゃあ何で笑顔でこっち見てんのさ…」
「いやぁ世羅、かわいいなぁ〜って☆」
・・・
はぁっ!?ラビがおかしくなった??!
眼医者?眼医者ぁ!!いやあの眼帯のせいかっ!?
『お前なあ…』
(何?)
『…いや…何でもねぇ』
何なんだ?
「とりあえずラビ。眼医者に行こ!!」
俺がそう真剣に言うと、ラビは一瞬きょとんとしてから、笑った。
……俺…ラビの笑いのツボがわかんない…
アレだよね。
さっきまで親近感を感じてたのは、気のせいだったのか。
そうだったのか。
「予想はしてたけど、ほんとにそういう返し方されるとは思ってなかったさ。なるほどね」
「なるほど…って何が?」
「いやぁ、この手の話には疎いんだなって」
「?」
この手?どの手?その手?
今何の話してたっけ?眼医者の話?
…えっ、眼医者の話に疎いってこと?!何それ?!
眼医者の話に疎いとか疎くないとかあるのかっ!?
『だからお前なぁ……』
(?さっきから何だよ)
『いや‥…いい。…はぁ…』
何なんだ…?
「その手ってどの手のこと?」
そう言うと未だに笑っているラビと、堪えつつも笑っているコムイさんが固まった。
えっ…これって禁句とかだったの?!
なんて冷や汗を垂らしながら戸惑っていると、いきなり二人が意味不明な会話をし出した。
多分、俺はバカにされてるような気がする。
誉められてはいない…はず…
え、もしかして陰口言われてる!?
いや、堂々と正面だから、ただの悪口言われてるのか!?
「うっわ〜鈍いとは思ってたけど、ここまでとはねぇ…」
「天然記念物級だね」
「だな。あ〜ぁ、苦労しそうさ…」
「リタイアしたっていいんだよ?」
「誰がするかよ」
この二人…異次元で会話してるんだ……きっと。
もう、ラビのこと良く分かんないや。
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