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「嘘ぉ…」




口をあんぐり開けて、ラビはそう言った。
いきなり信じろって言われても、難しいよね。




「いや。ほんとの話」

「イノセンスが……?」



俺はこくんと頷く。



「喋る……?」


俺はまたこくんと頷いた。




「どういうことさ……」



「えっと…何ていうか、そもそも黒燿は正確に言えばイノセンスじゃないらしくて…――― 」


それから簡単に黒燿のことを説明した。
ラビはさっきとは打って変わって、真剣な顔で聞いている。
もしかしたら記録しているのかもしれない。
ブックマンって確かそういう仕事だもんな。








「 ―――…ということなんだけど…」


長々と説明し終わってラビを見つめる。
話が終っても真剣に何かを考えているようだった。



「このこと他に知ってるヤツは?」

「今んとこ、ラビだけ」


そう言うとラビは、驚いたように目をぱちくりと瞬いた。



「コムイにも言ってないんさ?」

「あっうん。えっとですね…ウチの黒燿さんが、あっ黒燿っていうのは俺のイノセンスのことな。んで、その黒燿がさ、科学班の人達にばれれば絶対調査される…って。色々いじくられるのが嫌みたい」

「あははは…否定はしないさ…」


ラビは冷や汗を垂らしながら、明後日の方向を向いてそう言った。
顔には「コムイ達ならやりそう…」と書いてある気がする。

…やっぱり言わなくて正解だったかも。




「だから…勝手なこと言ってるのはわかってるんだけど…このこと誰にも言わないでくれる?」


思わず不安そうな声が出てきてしまった。
だって、話を聞く前は言わないって言ってくれたけど、やっぱりそんな私事で秘密にしとくのは良くないって思ったかもしれないし…。

だが、ラビは思ったよりも簡単に頷いた。
思わず聞き返したくなるまでにあっさりと。



「えっ…いいの…?」

「そんな不安そうな顔すんなって!オレそんなに口軽そうに見えるさ?」

「う〜ん…」


軽そうに見えるかなぁ…見える?見えない?パッと見軽そうだけど、ブックマンを継ぐぐらいだから口固いのかな?あっでも口すべらしそう…――




「あの‥マジそんな真剣に悩まれると傷つくんだけど…」

「うぇっあっごっごめんっ!!」

「いいさいいさオレなんて…」


あぁっラビがやさぐれた…!!

そうだよね!
嘘でもこういう時って即答するべきだよな!?




「あぁあぁごめんってばっ!!」



ラビはこちらにちらりと視線を向けた。
まだ、少し恨みがましい目付きである。



「じゃあ一緒にコムイの所行くさ?」

「うん。行くから!…っうぇっ!?」

「んじゃあ、さっさと行くさ♪」


あまり内容も聞かずに答えると、いきなり体が宙に浮いた。
ラビが俺を抱えて槌で移動し始めたからだ。




「うわぁぁぁああ!!」

「伸伸伸伸っ!」


すごい勢いで進んでいく。
俺、自分で飛べるのに…
この方角的にどうやら教団に向かっているらしい。

ということは巻き戻りの町に行けないじゃん!!?



「ラビちょっ「大丈夫」……へ?」


ラビにちょっと止めて降ろしてもらおうと声をかけると、俺の心を見透かしたかのようにラビが言った。
驚いている俺を気にせず、ラビは言葉を続ける。



「大丈夫大丈夫。世羅が何でそんなに焦ってっか知んねェけど、大丈夫」


変に自信に溢れている、でも優しい声に心が暖かくなった。
何だか、心に新しい部屋が出来たみたいに心がスーッと軽くなった。

色々考えすぎててキャパオーバーしてたのかな、俺。





「そうだよね…大丈夫だよね!!」

「そうそう。大丈夫っしょ」



やっぱりラビはすごいや!心の大きさが違うなぁ…

なんか…――





「なんかラビ、お兄ちゃんみたい…。ラビに会えて良かった」


微笑みながらそう言った瞬間、ラビが落ちそうになった。



「何やってんだよ?」

「いや…何でもないさっ!!?俺も世羅に会えて良かったさ。
 ……まぁ最初はお兄ちゃんでもいっか…」

「?」


赤くなったりため息ついたり、忙しいな…。


そんな俺の呆れた視線が気まずかったのかラビは頬を掻いて、目を逸らした。
そのまま前を向いてしっかりと槌を握り締める。



「伸伸伸伸伸!」

「わっ」


槌が速度を上げた。
何だか無性に笑いがこみ上げてきたので、くすくす笑い声をもらした。



「どうしたんさ?」

「これ楽しいね」

「だろ?」

「うん」





さっき初めて会ったばかりなのに、昔から知り合いだったかのように俺たちは笑い合った。



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