巻戻りの街の話に出遅れている。
そう悟った俺は、
「ということで、俺行ってくる!!」
ラビにそう告げ、飛び立とうとした。
が、
「えぇ!ちょっと待つさ!?」
ラビに羽根を捕まれて、止められてしまった。
意外と力を込めて止められているので、飛ぶことが出来ない。
俺は身を捩って手を振りほどこうと藻掻いた。
「放してっ!!何で止めるんだよ!!」
「落ち着けって!
ということって…一体どうしたんさっ!!」
「どうしたって!?行って止めなきゃ!!だって…じゃなきゃアレンのひだ 『世羅!!』 !?」
ラビに叫び返していた言葉は、途中で黒燿の声によって遮られた。
黒燿の声が聞こえないラビは、いきなり言葉を切った俺を不審な目で見ている。
が、頭に血が上っている俺はそんな事に気付かなかった。
大声で黒燿に叫ぶ。
「何だよ!?黒燿まで俺を止めるのかっ!?」
『落ち着け』
「落ち着いてられっかよ!!だってだって…アレンのひだっ 『いいから落ち着けって言ってんだろっ!!』 」
「…っ」
初めて本気で黒燿に怒られた。
シンクロしているせいか、言葉だけでなく全身で黒燿の憤りが伝わってきた。
そのショックのせいか、頭が冷えてくる。
馬鹿じゃん俺…
とりあえず白翼をしまって、深呼吸をする。
黒燿には多分俺の気持ちなんて筒抜けだと思うけど、言葉にして謝罪とお礼が言いたかった。
「ごめんなさい……と、ありがとう黒燿」
冷静になって振り替えってみると、黒燿にあそこで止めてもらって良かった。
俺はあの時、“アレンの左眼が…”と言おうとしていた。
おかしいよな…アレンが何処に行ったかも知らないはずの俺が、アレンが怪我することまで知っているなんて…
疑われても、仕方がない。
「世羅…?」
そうラビが恐る恐る声をかけてきた。
その戸惑ったような声で、思考の渦から抜け出してきた。
はっとラビの方を向く。
反応をしめした俺にラビは言葉を続けた。
「世羅…?いきなりどうして……それに一体誰と話してるんさ…?」
「俺、もしかして…声に出してた…?」
冷や汗を垂らしながら聞くと、頷きで返された。
こんな時にこの癖でないでよー!!!
「えっと…これは……そう!独り言!独り言!!」
「世羅…」
慌てて取り繕ってみたが、嘘はバレバレであった。
ラビの戸惑った視線が向けられる。
と、その時黒燿が喋った。
『…俺のこと話せ』
(えっ…でも黒燿、嫌がってたじゃん!)
『別に知られても困ることでもないし』
そりゃあ…考えてみたらそんなに困ることではないような気もするけど…黒燿なんてそんなレアな存在を放っておくかな…?
漫画では黒燿は登場してなかったから、違うと思うけど……“ハート”の疑いがかかるし…そしたら危険じゃん!
(いや…でも…)
『ソイツに口止めしとけばいいだろう』
(でも…)
『俺がいいって言ってんだからいいんだよ』
(わかった)
沈黙に耐えきれなかったのか、ラビがまた何か言おうとして口を開きかけたので言葉を放った。
「世羅…「あのさ、ラビ…誰にも言わないで欲しいんだけど……」」
途中で言葉を止め、ラビの反応を待つ。ラビはすぐに頷いた。それを見てから話を続けた。
「俺のイノセンスさ……
喋るの…」
「へ…?」
真剣だったラビの顔が面白いくらい間の抜けた顔へと変わっていった。
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