「すっげぇー!早業ー!!」
俺がそうキラキラと感激して言うと、またティキがずっこけた。
誉めたのに…
「俺…自信失くしそう…」
そのまま立ち上がらずに凹んでいるティキ。
とりあえず慰めのつもりでぽんと肩を叩いてあげたら、もっと凹んでしまった。
何故に?
『世羅。今すぐソイツから離れろ』
(何で殺気出しまくってんの?!殺る気はないみたいじゃん!!なんかファイトの方のやる気はあるらしいけど)
『…はぁ』
何なんだよ!二人して!!
とりあえず黒燿はほっといて、今にもキノコが生えそうなティキの様子を伺う。
よく見ると耳には黒い蝶のピアスが輝いていた。
あれ?あのピアスどっかで見たことあるような…
ぽんっと手を叩く。
「あぁ!わかった!!
これ失くしてたからそんなに凹んでたんだ。なるほど!」
そう言ってポケットを探り、さっき戦闘中に拾った物を取出してティキに差し出した。
ピアス失くして凹んでいるティキというのが面白くて顔がにやけているのは気にしないでほしい。
「ほら偶然俺が拾ってたんだしそんなに凹むなって!」
「・・・」
「?…うわぁっ!?」
地球が回った!
いやいやいや地球は普通に回ってるもんだから…視界が回った!!
「やっぱ厄日撤回だな♪」
俺が慌てていると頭上から声が降ってきた。
なるほど早業第2段が起こったらしい。
差し出した手をひっぱられて、いつの間にか立ち上がっていたティキに抱きとめられたんだと思う。
片手はティキに掴まれたままである。
(何がしたいんだ?)
『だから早くソイツから離れろっつっただろ!』
(え、なんで黒燿はそんなに怒ってんのさ)
『いいから離れろ!』
訳分かんない…
とりあえず黒燿が恐いので、従うことにした。
精一杯、掴まれていない方の手で抵抗してみた。
が、元から力はそんなに強くはなかった俺があのティキに勝てるはずもなく、もう一本の手も掴まれてしまった。
残された武器は口だけ。
「あの〜離してくれませんか?」
「君の名前は?」
「えっと‥聞こえてます?」
「まぁまぁ。で、名前は?」
いや、会話噛み合ってないから!!
何故かティキは掴んでいた俺の手を離し、早業第1段のように顎をつかみ、腰の方に手を回してきた。
…Shall we dance 的な?
え、何で今そんな感じになっちゃってんの!?
「世羅ですけど…?」
「へ〜世羅、か」
この態勢もだが、妙に含みのある笑顔も気になる。
ていうか顔近くないか?
『今すぐ離れろ!!』
「俺はティキ・ミック卿。よろしく…」
『世羅!!』
「え?……んっ?!」
何が起こったのか一瞬理解出来なかった。
いや、したくなかったのかもしれない。
勘違いでなければ唇に温かいものがふれている。
キスだよね?
キスってやつですよね、これ。
―…ティキにキスされてるっ?!
「んーー…ぅんっ」
自由になった手で離れようとしたが、力の抜けた手ではやはり適わない。
その間にもティキは好き勝手し放題している。
「…んんっ……ふっ」
口が塞がれていて息が出来ない。
初心者の俺に鼻で息するとかいう発想が浮かぶわけがない。
意識が朦朧としてきた。
相模の声も遠すぎて聞こえない。
「……ふっ、ん…ふぁっ!」
!!?なっ!?
その時口の中にぬるっとした何かが侵入してきた。
「ぅ………んんっ!!」
ぼんやりする意識の中、必死で抵抗した。
昔こういう奴がいたらこうしろって教えられたのを思い出して。
「っ!!…やるねぇ」
「ぷはっ…」
「まさか噛まれるとはねぇ」
「〜っ!!」
そうティキがやにやと楽しそうに笑いながら言うので何だかいけないことをしてしまった気がしてきた。
いきなりベロが入ってきたら誰だって驚くよな?!俺の反応って普通だよな?!噛み付いたのだってちゃんと教えに従った正当防衛だよな?!
『世羅…』
悩んでいると、黒燿の声がやっと聞こえてきた。何故か震えている。
(何?)
『今すぐアイツをぶっ殺せ!!黒炎で消し炭にしてやれ!!!』
(……無理)
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