世羅はザオラルを唱えた    [ 50/159 ]

いやぁ〜いい天気ですねぇ〜
本当に。こういう時は緑茶がうまいっ!!








・・・




「って違ああぁぁぁう!!!
ヤバイヤバイ!!あまりの暇さに老後の縁側での会話みたいになってしまった!!
しょっぱなからコレってどうよ?!この暇さはいけない!!なんかヤバイ!!!」

『しょうがねぇだろ。お前、自宅療養中なんだから』

「治った!!もう全然平気っ!!このままじゃ逆に大丈夫じゃなくなる!!暇すぎて病んじゃう!!」



そう俺はこの前のマテールの任務の時に大怪我を負ってしまった。
それプラス使い慣れていないのに黒燿を使いすぎたのが祟って、ぶっ倒れてしまったのだ。

あっ、ちなみに今はコムリンの事件の2週間後ぐらい。
俺はあの後3日間も眠り続けていたらしい。
眠い眠いとは思っていたけど、まさかそんなに眠れるとは俺もビックリ。

起きた時にはもう黒燿も起きていたから更にビックリ。
そして、黒燿には呆れられた。

まあ、話は戻して、そんなこともあったせいで自宅療養(というか教団が家なので自室療養?)を宣告されてしまったという訳だ。


そりゃあ、1週間ぐらいだったら休みを喜んで満喫できたけど、長すぎるとすることがなくなってくるのだ。


ぶっちゃけ暇。
すっごく暇。






「暇暇暇暇暇暇暇暇暇…」

『うぜぇ!!』

「ひどいっ。黒燿は暇だと思わない訳?」

『あ?俺はのんびりできていいぞ』

「・・・・・・・・・年寄り」

『はぁ…んじゃ科学班のヤツらんとこでも行ってこいよ。なんかあるだろ』

「うん!行く」



黒燿の言葉に速答して、俺は部屋を飛び出した。

ケガは完治はしていないけど(コムリンのせいで一回開いちゃったし)、でも無茶しない限りは絶対大丈夫。
病は気からってね。



『なんか違うだろ…』



暇が解消されるかもしれないことに浮かれている俺は、都合よく黒燿の言葉は聞き逃した。






「お邪魔しま……アレ?」


科学班に入ってみるといつもと違う空気に、言葉を途中で切って静かに中に入った。

皆がコムイさんの机の周りに集まって会議しているみたいだ。

何か問題でも起きたのかな?

不思議に思ったので、近くにいたリナリーに聞いてみたところ、



「何かあったの?」

「アクマが大量発生している所があるんだけれど、皆出払ってて頼める人がいないんですって。それで困っているの。私もこれから任務に行かないといけないし…」


ということらしい。

アクマが大量発生。
しかも人手不足。




キラン



光ったよ!
今俺の鷹のような目は光ったよ!


『子犬の間違いだろ』

(うるさい)


というか、子犬って…成犬ですら無いの、俺!?
いや、でも今はそんなことを気にしてちゃ駄目だ!

だってこんなおいしい暇つぶしを逃してなるものかって感じだからね!



「はいはいはいは〜いっ!!!俺行く!!俺に行かせて!!」


手を挙げながらそう言うと皆が一斉に振り向いた。
ちょっと恐い。
それに気圧されながらも、必死で自己主張した。
精一杯自己主張した。





が、






「「「「「ダメ!」」」」」

『だろうな』



満場一致で否定されてしまった。


…ていうか黒燿もかよっ!!


(黒燿が仕事をもらえばって言ったんだろう!?)

『言ったが、誰も任務に行っていいなんて言ってねぇよ』

(…っぐ)


黒燿の正論(?)に言葉が詰まった。
というか、絶対さっきの年寄り発言の仕返しだっ。

ただ、ここで負けるわけにはいかない。


えぇいっ!
ここで負けちゃダメだ!
ガンバレ、俺!!



暇返上のためにも!!



かくして、俺vsコムイさんの戦いが始まった。



「何で駄目なんですか?」

「世羅くんはまだ療養中なんだから、休んでなさい」

「えぇ〜、もう治った!全然大丈夫!」

「だ〜め」

「でも、行く人まだ誰も見つかってないんでしょ?」

「まあそうだけど…世羅くんこの前の任務の時、イノセンスの使いすぎで倒れたの覚えてる?」

「それは覚えてるけど…」

「それに傷だってまだ」

「あれはコムリンのせいでもあると思うけどな〜。せっかく塞がってたのに開いちゃったし」

「うぅっ……コムリンは悪くないもん


コムリンの名前は、効果覿面だった。
言葉に詰まるコムイさん。
だが、小声でコムリンを擁護するのは忘れていなかった。

まだ懲りずに言ってるよ・・・。


とりあえず、後一押しだ!





「それに、早く倒さないと、放っておいたらアクマが進化しちゃうよ?」

「うっ…それはそうだけど、でも…」

「よぉしっ!わかった!!こうしよう。今回は移動以外で黒燿は使わない。その代わり紅燐を使う。射的練習もできるしね。これでОΚ?」

「本当に?黒燿で攻撃しないって誓える?」

「誓う!すっごく誓う!!」

「はぁ…わかった。僕の負け。
その代わり無茶はしないように!!わかった?」

「はぁーい!」


第一回俺vsコムイさんの戦いは俺の勝利で幕を閉じた。
周りから何故か拍手が。
いやいや、どーもどーも。

俺は小学生よろしく元気よく返事して、コムイさんから書類を受け取った。



「こっちも空いているエクソシストが見つかったらすぐそっちに向かわせるから。ほんとに無茶しちゃだめだからね!!」





なんだかコムイさん俺の保護者みたい。



…そういえば両親がいなくなってからこんなに心配されたことなかったな…



そう考えると少し嬉しくなった。
人に心配されるのも悪くない。




「了解!ありがとうコムイさん。じゃあ行ってきます!!」



なんだか急に嬉しくなって、俺は笑いながら外へ飛び出した。










固まった科学班の人達を残して。


(((((俺、今、何かものすごく心が洗われたわ…)))))



その日、ゾンビのように精魂尽き果てた様だった科学班の面々が、活き活きと仕事をしていたという謎の光景が見られたという。


*prev / next#

目次へ
しおりを挟む



第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -