さらばコムリン    [ 47/159 ]

アレンが収容されてしまった。
そしてアレンを収容するという任務を終えたコムリンは、視線を再びリナリーに向けて動き始めた。

やばいリナリーがマッチョにされるっ!
アレンの尊い犠牲がムダになるっ!


俺はリナリーに駆け寄る。



と同時に聞こえたコムリンの声。




『エクソシスト リナリー・リー、相模 世羅。手術シマス』







えっ…俺もだったのぉー?!!
いつからそんな事に!?


意外な事実に驚きつつも、手は紅燐でもう一本コムリンの足を落としていた。



ナイス俺!ナイス条件反射!!



多分もうすぐリナリーが目を覚ますはず。
それまで保てばいいのだ。
コムリン自体を倒せたらいいのだけれど満身創痍の今じゃ大きいのは撃てない。
ここはリナリーに甘えることにした。




「マッチョは嫌だー!!」


コムイさんが叫ぶ。

俺だって嫌だよーっ!!ていうか俺は女扱いか?!
そりゃ華奢だけどっ!ひ弱な見た目なのは自覚してるけどっ!
大きなお世話なんだよーっ!!

俺も心の中で叫んだ。









コムリンの目が怪しく光る。
リナリーがいた所が破壊される。
近くにいた俺は瓦礫に飲み込まれかけてしまっていた。

もう俺ここでこのまま寝てていいかな・・・
今なら安らかに眠れそう。

上を見るとコムイさんが身を乗り出して泣き叫んでいた。




「キャアアアアー、リナリー!!リナリー!!ボクのリナリー!!!」

「!し、室長あれ!大砲の先…」


ふと思ったけど、ボクのリナリーってそれはそれで問題な発言だよね。

まあ、何はともあれ、




「よかった〜」


リナリー様のお目覚めだ。

ならもうすることはない。
というかもう今度こそ本当に動けない。
信じたくないけど、多分傷口が開いてしまったかも。
痛み止めがまだ効いているのか、それほど痛みがないのが幸いだ。

俺は瓦礫の海の上で傍観者と撤していた。







「アレンくんの声が聞こえた…帰ってきているの…?」




『エクソシストは手術ー!!』


ぼうっとしているリナリーにコムリンが飛び掛かる。
残った三本の腕(?脚?)で三角の浮遊物体に巻き付く。
そのせいで乗っていた科学班の人たちは、落ちそうになっていた。




「リナリー!!この中にアレンがいるんだ」



リーバーさんの声にもそんなに反応しないリナリー。
なんつーか、リナリーの目がうつろだ。
多分半無意識の状態だと思う。
無意識って恐ろしい。




「へっへ。ばぁか。イノセンスを発動したリナリーを捕えられるもんかよ…胡蝶のように天空を舞い、鋼鉄の破壊力で地に墜ちる。それがリナリーの対アクマ武器“黒い靴”だ」



そんなこと考えている間にもリナリーは無慈悲にコムリンを破壊していく。
そんなリナリーを、リーバーさんは得意気に解説しだした。


ついにコムリンが真っ二つにされた。
アレンも無事救出されたようだ。無事かどうかは少し謎だけれど。
そして元凶のコムイさんの方を見てみると、顔が面白いことになっていた。
例えるなら“ムンクの叫び”みたいな?

凄いね、人間ってあんな顔出来るんだ。




「いいぞリナリー!ブッ壊せー」

「カッコいいー」



科学班の皆からは、ブッ壊せコールが巻き起こる。
そんな声援に答えようとしているのかは謎だけれども、リナリーは片足を上げコムリンにとどめをさそうとしていた。

と、その時コムリンの前に立ちはだかる影が…




「待つんだリナリー。コムリンは悪くない!悪いのはコーヒーだよ!!」

「アンタ…」



もちろんコムイさんだ。
よじ登ってきたリーバーさんは、そこまでしてコムリンを守るコムイさんに怒りを通り越して呆れた表情を向けていた。



99%の信頼と1%の殺意って言うけど…多分5%くらいには膨れ上がっていると思うよ…





「罪を憎んで、人を憎まず。コーヒーを憎んで、コムリンを憎まずだ。リナリー」

「兄さん…








ちょっと反省してきて」



呆気なくリナリーに一蹴されてしまったコムイさん。
本当に、文字通り一蹴。


リナリー、かっこいいー








「なんだかな。もう…」



誰が言ったかわからない呟きは、皆の気持ちを代弁して闇へと吸い込まれていった。



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