進まなきゃ    [ 38/159 ]

探索部隊の人を離れた所にある廃墟の中に隠した。
万が一の為に黒炎で周りを囲む。

これでアクマに見つかったとしても、手出しはできないはず。


そこまでしたところで、荒い息で溜息を吐いた。

苦しい…



『何考えてんだ!!癒しの炎なんか使いやがって、この後どうするつもりだ!』


黒燿はかなり怒っているようだ。
怒声が頭に響く。

こういうとき、頭の中で会話出来るのって便利。
などと、やけに冷静な自分が考えていた。


(しょうがないじゃん。何にも考えてなかったんだから)

『お前分かってんのか?!あの技は治癒能力は確かに高いが、その分お前の体力を大量に消費するんだぞ!!それに黒炎だって使いやがるし…!!』

(わかってる。けど、放っておいたらあの人死んじゃいそうだったんだもん!!)

『…そんな体でどうすんだよ?』



これから戦えるのかと問い掛けてくる。

黒燿の技は威力は物凄く強いが、その分俺の体力も削られていくのだ。

多分それは完全な適合者ではないから。


ただ、これでも黒燿が力を貸してくれてるので、だいぶ軽減されているから、辛うじてでも立っていられる。

それでもさっきの技で力を使い過ぎたようだ。

次は力配分に注意しなきゃね。

そう苦笑を零そうと思ったが、そんな力すら残っていなかった。


体がすごくだるい。
手足を少し動かすだけで、億劫になる。






だけど…―――





「進まきゃ…!!」



萎えそうになる手足を叱咤して、立ち上がる。
膝が砕けてよろめいたが、何とか持ちこたえれた。

黒燿は何も言わなかった。

構わず話続ける。





(あの人さ、俺の知ってる未来ならさっき死ぬはずだったんだよね…。でも、俺が助けたから今も生きてる。俺思うんだ、未来を知ってるから出来ることもあるって。
だから、少しでも、俺に出来るなら、皆を助けたいんだっ!!)




やはり黒燿は何も言ってはこなかった。
勝手なことを言って怒ったのだろうか、とだんだん心配になったとき――




『はぁ…言っても聞かなさそうだもんな、お前。わかったよ!力貸しゃいいんだろ!!貸しゃ!!』



ため息の後、自棄になったように黒燿は言った。
と、同時に力が湧いてきた。
完璧と言うわけではないけど、手足のだるさも気にならない程度になった。



『俺の力分けてやったんだ…感謝しろよ?』

(黒燿はどうするの?)

『こんくらい2、3日寝りゃ元通りになる。ほらとっとと行け』



意識してないのに白翼が出る。
黒燿が出してくれたみたい。



『俺は今から眠りに入る。まぁ頑張ってこい』

(ありがとう!!)




返事は返って来なかった。
本当に黒燿は眠ったようだ。
俺は飛び立った。

ひとつの思いを胸にして。








絶対助けるから…―――


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