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とても真っ暗な所だった。

自分の姿すらも分からないほど真っ暗な所だった。
何故か俺はそんな場所にいた。
夢を見ているような気分だった。
ようなではなく、夢を見ているのかもしれない。

分からない。何も分からない。

意識がぼんやりして妙に体がふわふわする。
浮いているようだ。
自分がちゃんと地に足をつけているのかも分からなかった。







ピチョン


ピチョン






どこからか水の音がしている。







水…?










『やっと見つけた』


――誰?







ピチョン



人の気配は感じられない暗闇から声がした。
水の音に掻き消されることなくしっかりと。
遠くから聞こえるのか近くから聞こえるのかは分からない。
むしろ、脳に直接音を流し込まれたと言った方がしっくりくるだろう。

ただ、とても心地よい声だった。
優しくて暖かくてでも力強い声。





ピチョン






『やっと見つかった』


――だから誰なんだよ!?




こちらの声は聞こえていないのか、声の主はただ続けるだけだった。
見つけたと。

誰?
誰なんだ?
見つけたって?
俺を探してたのか?

何で?
どうして?
どうして?どうして?どうして?





ピチョン





ピチョン






ピチョ…











水の音が――








『俺はお前の―――』












――消えた。



水の音が途切れるのと同時に、声は途切れた。
待っていていも、もう声が聞こえることはなかった。






「くろい…はね?」



気がつけば足元で黒い羽根が波紋を作っていた。
声の主の落し物であるかのようにひっそりと。
ざわりと胸が騒いだ。



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