悔しいことに足の長さが違うので、苦労しながらも早足な神田の横に並ぶ。
悩んだすえ、ダメ元で聞いてみることにした。
「あのさっ、ユウって呼んでいい?」
「・・・」
神田の方が身長が高いので見上げながら聞いた。
神田は一瞬ちらりとこっちを向いたが、すぐに視線を前に戻してしまった。
「ダメ、か…」
ダメか〜…まぁ無理だってわかってたけどね。漫画でもラビが呼んだら怒るって言ってたし。
会って早々名前を呼ばしてくれるほどフレンドリーな性格をしてる訳ないしな。
ただ、ダメだとわかっていたんだけれど、断られるのはやっぱり悲しかった。
落胆の色が声に滲み出ていた。
神田はもう一度こっちを向き、また前を向く。
「…勝手にしろ」
俺は確かに神田がそう吐き捨てるように呟いたのを聞いた。
「えっ?!いいのっ?!」
思わず聞き返してしまうくらい、驚いた。まさか許してもらえるなんて!
あまりの嬉しさににやけてきたのがわかる。顔も赤いかもしれない。
神田の顔を覗き込もうとしたが、反らされた。おまけに一層、早足にもなった。
――…もしかして照れてる?
神田がかわいくみえたので、くすくす笑った。
神田が不機嫌そうに睨んできたけど、気にせず笑い続けた。
「何笑ってやがる!!」
「あはははっ。何でもなぁ〜い!」
「…チッ」
ひとしきり笑ったらやっと笑いが納まった。
今更だけど、何処行くんだろ?やっぱ黒の教団かな?
いちよう聞いとこっかな?
神田…じゃなくてユウって呼んで良いんだよ、な?
うぅ〜…緊張する〜!
「ゆっ、ユウ?えっと、そういえば何処に向ってるんだ?」
「黒の教団だ」
神田は足を止め振り向く。
そこにあったのは寂れた港と舟…――
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