興味の否定 side:?    [ 18/159 ]

それは、いくつか目かの路地を曲がったときだった。
人の話し声が聞こえた気がした。
耳をそばだてると確かに聞こえた。一つ隣の路地からのようだ。
立ち止まり、声に集中する。






            『何?』

           『あっ…』




女か男か声だけではわからない。
中性的な、耳に心地よい声だ。
おかしなことに、誰かと話しているような口振りだが、聞こえてくるのは一人の声だけだった。
無人島のはずなので、この島にいるのは俺と適合者しかいないはずなのだが、何というか、この声の主が適合者だとは思えなかった。



本当にコイツが適合者か?


などと疑っていたら、不思議な響きをもった声が響いた。



     『終焔舞。安らかに眠れ…』




その瞬間、周りに燻っていた炎が一瞬にして消えた。








「…っ」



安らかに眠れと言った声は何故か慈愛に満ち溢れていて、満ち満ちていて、息が詰まった。


見えなくてもわかる。
絶対に声の主は優しい表情を浮かべているに違いない。





――危険だ。



こいつは間違いなく、今まで苦しみを知らず幸せに生きてきた甘ちゃんだ。





――そうでなければ、敵であるはずのアクマにそんな優しい言葉をかけられるはずがない…っ!!



こいつは危険だ。

そう俺の本能が告げる。

そう。
こいつは危険だ。


でも、それと同時に何故か分からないけれども、ものすごく気になっていた。
むしろ惹かれていた。


早くどんな奴か見たいと、足が勝手に一歩を踏み出した。
慌ててそれを理性で止める。


何をやっているんだ俺は。
こいつは危険な奴だ。
戦いにおいて邪魔にしかならないだろう人間だ。

何をやって――



俺はそこまで考えて首を振った。

何も考えなくていい。

他人に突っ込むとろくなことがないだろうと自分に言い聞かせ、改めて自分の意思で一歩踏み出した。

そうだ。
こいつが適合者であるのは間違いはないのだから、さっさと連れて帰ってそれで終わりだ。
終わりなんだ。




六幻を抜き、背後から首につきつける。

そうだ。
戦場で馴れ合いなんていらない。
そんなもの望んでいない。
人と深く付き合うなんて後に残る傷が深くなるだけだ。
傷は浅ければ浅い方がいい。







だから――







「お前は何者だ」









――人は突き放してしまえばそれでいい。


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