「どういうことだ…?」
空から降ってきたアクマらしきもの。
それは自然界の炎ではないと、暗に語る黒い炎に包まれながら目の前で燃え尽きた。
黒い炎はアクマを飲み込んでも尚、飽き足りないかのように燃え盛っている。
急いで、アクマが落ちてきた方――頭上を見上げてみたがもう何もなかった。
無意識に舌打ちをする。
先程終えたばかりの任務の疲れと、説明にはなかった状況が相まってイライラは募る一方である。
それもこれも全部コムイのせいだと思うと、無性に腹が立ってきた。
そもそもの発端は前の任務が終了した時に、コムイからかかってきた迷惑な通信だった。
『連続で悪いんだけどね〜次の任務、直接そこから行ってくれないかな?』
『あ゙ぁ゙?!』
おちゃらけた口調に、不機嫌を隠す気もない俺は荒々しい語調で返した。
なんせ、先程終わった任務も前の任務から直接向かったものだった。その前もだ。
イライラが最高潮に達するのも無理はない。
『
いゃ…あのね…なんかね…』
『はっきり言いやがれ!!』
『だって神田クン怖いんだもん〜(泣)』
『切るぞ』
本気で切ろうかと思ったが…
『ああっ待って!待って!!お願いだから切らないでっ!!』
踏みとどまってやった。
『
チッ…さっさと用件を言え』
『やったー♪
アクマが大量発生している所があるんだ。神田クンにはそこのアクマ退治をお願いしたいんだよね。ちょちょいっとやっつけて来て』
『…場所は?』
『今君がいる所から北東に10qほどにある小さな孤島さ。島の名前はディスクール。元はなかなか盛えた所だったけど、何十年も前に無人島と化した所だよ。だからいくら暴れちゃってもОΚ★』
『ディスクール…』
『まぁそういうことだから…よろしく〜』
思い出しても腹が立つ。
やっぱり最初の方で切っとけばよかったか。
いくら暴れても大丈夫というのはいい憂さ晴らしになると思って来たが、憂さ晴らしどころじゃなくなっちまった。
「チッ…」
後悔してももう遅い。
そんなことより、と目の前の炎に意識を戻す。
先へ進むにはここを通らなければいけない。
だが、アクマを消し去ったくらいだ、迂闊に近寄るのは危険だろ。
どうしたらいいか考える。
「?!」
その時、ふと異常に気付いた。
地面に捨てられたゴミが炎に包まれているにも関わらず、全く燃えていなかったのだ。
そういえば炎に囲まれているはずなのに、熱さも息苦しさも感じない。
もしかしてと思い、手を炎に突っ込んでみた。やはり火傷一つしなかった。
こんな芸当が出来るのは一つ。
「…イノセンスか」
この炎はアクマには効いて、その他の物は何一つ燃えていない。
ということは、イノセンスである確率が高い。しかもこの様子だと適合者もいるようだ。
――久々の当たりか。
口の端がつりあがった。
ここ数か月はずれ続きだったが、思いがけないところで当たりが出たようだ。
そうと決まれば、まず適合者を探さなければいけない。
炎へと一歩踏み出す。
熱くないと解れば、ないに等しい存在だ。
アクマ退治から適合者探しへと任務は変更した―――
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