アクマの銃撃が一区切りついた所で、翼をしまいジャンプする。
さっき遊んでいたおかげで、難なく翼を動かせた。
入れられた情報からすると、俺の身体能力とかは上がっているらしい。
軽々とアクマの頭上を飛び越え、背後をとることに成功した。
心臓はバクバクしっぱなしだけれど。
えっと、何使おう…?
俺の対アクマ武器には色んな形状があるらしく、何を使おうか迷う。
…いやいや迷ってる暇なんてないじゃん俺!
えっと、えっと、ととととりあえずひとつずつ!!
「閃刃発動!!!」
そう唱えると巨大な爪のようなものが手を覆った。
「マジで俺…適合者だったんだ…すっげぇ…」
『いいからさっさと殺れ』
自分の手を見てしみじみと感動していたら、一喝されてしまった。
目の前のアクマは俺に銃を向けていた。
うぎゃー!!怖い!!怖いって!!!
「お、おりゃぁぁああ!!」
相変わらずバクバクしっぱなしの心臓を抱えながらも、手を動かした。
爪でそのアクマを貫き、抜くと同時に横に薙ぎ切り裂いた。
が、
「ガガッ…エッエクソシスト‥ころス…」
アクマは爆発することなく、まだふらふらと動いていた。
致命傷にはいたらなかったようだ。
だから怖い!!怖いって!!
とどめの一撃をと思い、手をあげると背後から銃撃を受けた。
「っ!?」
白い翼を出してそれを防ぎ、そのまま上空へ飛ぶ。
反応が遅れたせいで2・3発かすったが、後は防げた。
先程自分がいた所を見ると、もう1体アクマがいた。
「やっぱ他にもいたんだ…」
上からだとよくわかる。
自分がいる所へとわらわらとアクマが集まってきている。
ざっと14・5体はいるだろう。
1体でもいっぱいいっぱいだってのに、多すぎだっつーの!!
2体いるかもって焦ってたあの頃を返せっ!!
どうしろっていうんだよ!
パニックに陥りそうになった俺を救ったのはイノセンスだった。
『ぎゃーぎゃー騒ぐな。お前には俺がいるんだ。殺られるわけがないだろ』
「でも…」
『相手はたかがLv.1だ。何も恐れることはない。ほら、俺がお前に渡したデータをちゃんと自分のものにしろ』
「データ…」
目を閉じて、記憶という形で植え込まれているデータを思い起こす。
どうやって使うのか。
何が出来るのか。
何をしたらいいのか。
その全てがあった。
『さあ、よく考えろ。俺は弱いか?』
声が聞こえる。
自信に満ち溢れた声が。
弱い?
こんな声の持ち主が?
そんなこと、
「――有り得ない!」
『よしっ。お前の目の前にいるのは倒すべきものだ。それ以上の何物でもない』
「了解!」
強張っていた顔から力が抜けて笑顔に変わる。
不敵な笑顔に。
まだ心臓はバクバクいってる。
だけど、
俺はエクソシストなんだ。
すーっと右手を上に掲げる。
時間がかかればかかるほど俺には不利になる。
なら、一撃必殺!!
「黒炎発動!!
対象物を焼き尽くせ、灼火焔黒!!」
左手を右手に添えてアクマに向け、叫んだ。
すると、真黒の炎の渦が右手から出現してアクマを包み込んだ。
14・5体はいたであろうアクマは全て炎に包まれ、焼け落ち、跡形もなく燃え尽きてしまった。
念のため辺りを確認するがもうこの近辺にアクマはいないようだ。
「っっっよしゃああっ!!」
空中で一回転しガッツポーズする。
やったよ俺!勝ったんだ!
何より嬉しいのは、イノセンスを怪我させなかったことだよ〜!!
俺は喜びを噛み締めつつ、下に降り立ち翼をしまった。
翼はあれだけの弾丸を受けながら、微塵も汚れた形跡はなかった。
*prev / next#