この人が言うお前ってのは俺のことだから、お前が戦えってのは俺が戦えってことだよな。
ん?
俺が?
…戦う?
「えええぇぇっ!?無理無理無理無理無理無理っ!!!!戦えるわけないじゃん!!アクマってイノセンスじゃないと倒せないんだろ!?俺イノセンスなんて持ってないし!!第一、適合者じゃ…っ」
俺は首が取れるんじゃないかと言うくらい必至に首をぶんぶん振った。
オプションで手も振った。
だけど、返ってきたのは相変わらず涼しげな美声。
『俺はお前のイノセンスだ。そしてお前は俺の適合者』
「…へ?」
『ということで、お前は戦う理由と術を手に入れたわけだ』
「…へ!?」
この人(?)がイノセンス…!?
てかイノセンスってしゃべるのか!?
それより何より、違う世界から来たはずの俺が適合者!?
何でっ!?
『さっきも言ったが、説明は後でする。行くぞ』
「ストップストップっ!!仮に、もし仮にだけどっ。俺が適合者だとしても俺戦い方なんて知らないって!!」
武器があったって使い方がわかんなきゃただのガラクタだって!!
だけどやっぱり、返ってきたのは変わらない美声で…。
『能力は全体的に上げたし戦い方はお前の頭に入れた。後は自己流で学べ』
自己流って…そんな適当な…
あぁもうっ!
うだうだ考えてもどうにもなんないみたいだし、アクマ倒してこの人にいろいろ聞いた方が早いっ!!
いつまでもここにいるわけにもいかないし、習うより慣れろだ!
いや、戦いに慣れたくなんてないけどっ!!
目を閉じて深呼吸する。
ここは腹をくくらないといけない時だ。
「とりあえず…覚悟しろよアクマ?」
目を開けて、指をびしっとアクマに向ける。
まだ俺がいるのは羽根の中なので、アクマには当然見えていないのだけれど。(これは気分の問題なんだよ!)
…あれ?
ふとそこで、腕が軽いことに気付く。
「にゃんこがいないっ!?もしかしてさっきアクマにっ!!」
うそっ!どうしよっ!!
俺のせいだ…さっき叫ばなきゃ…っ!
とりかえしのつかないことをしてしまった。
自分のふがいなさに涙が出てくる。
「…っく」
『えっとだな。その…あれは俺だから。死んではいないぞ』
「………へ?」
意外な言葉が聞こえてきた。
この人がさっきのにゃんこ…?
どういうこと?
『だから、お前が助けようとしたのは俺ってこと。お前に庇われた時、お前を助けるためにお前に適合したんだ。だからこの翼がお前を守ってるわけ』
「にゃんこが…イノセンス…?」
ということは?
ということは…死んでないんだな!!
よかったぁ〜!!
何か複雑過ぎていまいち理解出来ないけど、とりあえずよかったぁ〜!!
「って…俺、寄生型!?」
『まぁそうなるな』
なんでよりにもよって寄生型っ!?
怪我したらどうしよ!?
コムイさんにはぜっっっったいに治療されたくないっ!!
『ほら、そろそろ行くぞ』
「ΟΚ…」
『?』
色んな意味で涙が出てきた…。
……とりあえず、怪我しなきゃいいだけだよね…?
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