ドドドドドドドドッ
耳をつんざくような銃声。
血を流し倒れてゆく自分の体。
――…のはずだった。
銃声は確かに聞こえた。
が、いつまでたっても痛みはこなかった。
「えっ…?」
恐る恐る目を開けてみると、目の前が真っ白に染まっていた。
一瞬天国に来てしまったのかと思った。
痛みを感じる間もなく即死かと。
天国って本当にあったんだな〜とかまで考えた。
だがよく見ると、真っ白なものは翼のようだった。
大きな大きな翼。
いったいどこからこんなものが…と、翼の出所を探った。
すると、自分の背中に辿り着いた。
・・・
辿ったら俺の背中=俺に翼が生えてるっ!?
「うそっ!?なっ何で、何でっ!!?」
―………あっ、見たいと思ったら向こうが透けて見えるんだ。へ〜便利な羽根〜。
さっきまでのありえなさすぎる出来事を綺麗さっぱり頭の中のごみ箱に捨てて、俺は現実逃避に励んでいた。
むしろ翼越しに見た景色を見なかったふりしたかったから、考え事に没頭することにした。
俺は何も見てない。
何も。
アクマなんて見てない。
わ〜すごいよな〜この羽〜。
もしかしてこれ俺の意志で動いたりする?
だって俺の背中から生えてるもんな?
好奇心に勝るものなし。
意識を背中に集中させる。
意外と難しかったが、何回か挑戦してみるとコツをつかんで動かせるようになった。
「おっ!すっげー!動いた動いた!!すっげー!俺天使みたいっ!!これで飛んたりできるかな?」
飛べるかどうだかやってみよーなんて思っていたら…
『いいかげん現実から目をそらすのやめろよ』
厳しいつっこみが入った。
「いやいや。俺は何も見てないデスヨ。アクマなんて見てない見てない……って誰っ!?」
ナチュラルに返事返しちゃったったよ俺!!
周りに人は…いないよな?
いやアクマならいるけど…
一瞬アクマか!?と思ったけど、有り得ないと首を振った。
さっきの声はアクマみたいに冷たい感じはしなかったから。
どっちかというと、暖かい感じ。
懐かしい感じすらする。
う〜ん…
聞き覚えがあるような、ないような…?
悩んでいたらまた声が聞こえた。
冷静になって聞いてみると、かなりの美声だ。
『俺のことは後で(多分)説明する。今はソイツ殺るぞ』
ソイツってアクマのことだよな?
てか今多分って聞こえたぞ!!
とりあえず、美声さんの言葉に微妙なひっかかりを感じたけど、どうやらアクマと戦ってくれるようなので応援することにした。
「ガンバレ…?」
なのに、返ってきたのは呆れを含んだ声だった。
『何、他人事みたいに言ってやがる。お前がやるんだよ』
・・・
What?
今この人なんておっしゃいました…?
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