新Dust | ナノ












 
執着は君だけに

※来神・恋人設定

もう2月だというのに朝はひどく冷え込んでいる

かじかむ指先は赤くなり、吐息は白くなって消えていく
他人事のように静雄は様子を眺めながら掌をポケットに突っ込み朝早くに通学路を歩いていた

日頃から派手な喧嘩ばかりの人間に、話しかけるのは数少ない友人だけ
クラスメートや先生までもが怯えるように目を合わせない

その原因はただ一人、いつも嫌な笑みを浮かべているあいつなのだが…

そんな事を考えて毎日早く校内に入り教室へ向かう
扉を開けた先には誰もいない空間
それは日常的に見ている景色

『なんだアレ』

…のはずが今日に限って違和感を感じた
よく見れば、紛れも無く静雄の机に何かが置いてある

甘い香りがするソレ

『これってチョコだよな』

そういえば、今日はバレンタインデーだったか

ただ明らかに差出人はあいつだろう

『嫌がらせか?』
『嫌がらせな訳ないじゃん』

どこからともなく声がしてきたと思えば扉付近に張本人がいた
『シズちゃんから貰いたかったけど、無理だろうからさ』

『意味わかんねえ』
『だから逆チョコっていうの?
アメリカでは本来男性があげるみたいだし合ってるでしょ』

得意げに口を動かす臨也に静雄はいらつくばかり

『なんで、てめえがやるんだよ』

そう言うと笑いながら臨也は聞いてきた

『分からないの?初めて手作りチョコにしたのに』
『だから何がだ!』
『シズちゃんが恋人だからあげるんでしょ』

さらりと言う臨也は恥ずかしくなさそうで、むしろ言われた静雄の方が顔を赤くしている

『君ってば鈍感すぎ、テレビとか特集してるじゃんか』
『…うるせえな』

そもそも臨也は人間に対して平等に愛を語っていたから、こんな相手を限定したイベントへ参加すると静雄は思わなかった

例え恋人になったとしても、今まで経験がない静雄には違いが分からない

『ホワイトデーはシズちゃんの愛を頂戴ね!』

一瞬顔を寄せて、臨也はさっさと踵を返す
ただ見つめるだけになっていた静雄は己の頬に触れた

『…ノミ蟲のくせに』

距離を詰めた瞬間に静雄は頬にキスされていた
身軽なあいつだからこそ出来る事

諦めてホワイトデーに何をあげようか悩みながら、置かれているチョコの包装を剥がしていく
綺麗に納まっていたハート型のバレンタインチョコ

デコレーションとして書かれた文字は、とびきりの愛を叫んでいた


title by 確かに恋だった






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