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初恋は実らないと言うけれど

《初恋》はいつ頃だったのかな?
今更な疑問に臨也は己を笑う
きっと初めて出会った時に惹かれてた

群がる人間は心にもない甘い言葉を囁けば笑みを浮かべ、自慢げに腕を絡めるのだから滑稽でつまらない
上辺だけとは気づかず、本気にする方が馬鹿らしくてどうかしてる

それだけ日常的な繰り返しばかりの学校生活に飽きていた

『こんにちは。そして、はじめまして平和島静雄さん』
『てめえ、いつも喧嘩見てた奴だろ』
『あれ、気づいてたんだ?』
『隠れるつもりなんかねえくせによく言う』

呆れたように呟く彼の手には標識が軽々と握られている

『君は有名人だから見つけやすくていいね』

この時に彼という存在と出会い、その繋がりが愉しみを招く根源となる

『てめえは上辺だけな顔してんな』

クスクスッ

『やっぱり君は面白い』

数年たった今でも変わらない
静雄は借金取りになり、自分は情報屋としての仕事をこなしながらも池袋…彼の情報へ目を向ける

『シ〜ズちゃん』
『てめえ…来るなっつっただろ!』

クスクスッ

『君の言う通りにする訳ないでしょ?せっかく来たのに酷いよね』
『こっちは会いたくねえんだよ!』
『正直じゃないなぁ』
『は?』

こんなやりとりが何年も続いてる
お互いに当たり前になった事象

『会いたいと思ってるよ』
『思うわけねえだろ』
『シズちゃんなら避ける事だって出来るのにしないじゃん』
『なっ…』

図星だったのだろう
反論したところで顔が赤くなっては意味を成さない

『こんなに君が可愛くなってるのに帰りたくないし』
『…………帰れ』
『んー、無理』
『無理でも帰れ!』

静雄は臨也の匂いが分かり、出来る限り自分から彼の元へ出向く
その瞬間に身体を動かしているのは、単純に《自分で臨也を殺す為》という感情だったはず

けれど今は会いたいから会いに行く、日常を考えると不思議な思いが働いてる

『嫌です〜俺の用事、済ませてないもん』

臨也は臨也で情報と人間を駆使して静雄を追い詰めたり、直接応戦するものの殺す一歩手前でどちらからでもなく戦争じみた喧嘩に終わりを告げる

『もういい…俺が帰る』
『せっかちだねえ』

今日もいつも通り決着がつくはずはなく、また戦争の決着は持ち越し
そもそも嫌いと言うわりに、関係が続いてる。それ自体が矛盾点なのだ

本当に嫌いなら相手をしなければいい、無関心こそが嫌いな者に対しての最善の策

少なくとも臨也はそう考えているが敢えて言わないでいる。言ったところで彼が納得するとは思えないし、自らも望んではいない

『シズちゃん、俺が好きでしょ?』
『んな訳あるか!ノミ蟲が調子にのってんじゃねえ!』
『じゃあさ、』

音が一瞬だけ途絶えたような感覚に墜ちた

『好きになって』

囁かれたのは、たった一言の願望
それは普段聞くことがない声音

過去の経歴からして他人との繋がりがあまり多くない静雄は本気で気づいていない。対して、臨也は気づかないふりを続けている

…俺はずっと前から好きなんだよ

大好きな彼が自分で気づいた時、どんな表情を見せるのか
ただそれだけを愉しみにして

二人が経験する人生最大の初恋
矛盾で綴られた両片想いの交差点


title by 確かに恋だった






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