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星屑の堕ちる夜

それは夜の世界が包み込む時間

僕は一人で夜風に涼んでいた
陽は鮮やかに光り続けながら沈み、今は月の光が淡く照らしてくれる

………………

しばらく空を見上げていると誰かの気配がした
もちろん、それは僕の想い人のもの

「そんな熱心に見られるといくら僕でも恥ずかしいよ、千鶴ちゃん。」
「えっ!?」

予想通り、そこには君がいて
大きな瞳を見開いたままゆっくりとこちらに出てきた

「あの、お邪魔でしたか?」
「まさか!恋人が来たのに邪魔だなんて思わないよ。」
「そうですか…良かったです」
「こんな時間に千鶴ちゃんが出てくるなんて、珍しいなとは思ったけどね」
「眠れなかったもので…少し涼んだら眠れるかと思って。」
「そっか、僕と同じだね。僕も眠れなくってさ。」

夏だからこその暑さは厳しい
衣替えをしたとはいえ、暑すぎて眠れない

「あの…沖田さん」
「ん?」
「やっぱり戻っ」
「だーかーら、千鶴ちゃんは気にしなくていいの!」
「気にしなくていいと言われても…」

いつも思うんだけど、君って他人の心配ばかり
僕よりも遥かに子供な君はとても優しいから、きっと気を配ってるんだろう
そんなことを考えていたら、いつのまにか君は夜空に魅入ってる

「…星、綺麗ですね」
「うん。今日は空が澄んでいたからね」

たまには気休めしないと、僕よりも先に君が倒れちゃうよ?

「ねえ、千鶴ちゃん。せっかくだからさ、一緒に星を見てようよ」

笑顔で隣に座るように促す

「ね、いいでしょ?」

君は断らないだろうけど、念のために

「少しだけですよ」

頬が紅くなってきた千鶴ちゃんは、照れ隠しのように僕と正反対に腰を下ろしてた

「なんで千鶴ちゃんの顔、紅いのかな?」

君って、やっぱり悪戯のやりがいがあるよ

「きっ、気にしないでください!暑いからです!!」

必死に隠そうとするなんてさ
余計にからかいたくなるじゃない
夜空で星がたくさん瞬いてるのもいいよね

「千鶴ちゃんは僕のこと、大好きだもんね」
「お、沖田さん!!恥ずかしいので、繰り返さなくていいです!」
「いいでしょ、お星さまに報告してるんだからさ。それくらい僕は嬉しかったんだよ」
恥ずかしがる君を、後ろから抱きしめるように座り直した
普段は高く結い上げる髪も下ろしていて、君が少し大人びて見える
それが可愛らしくて、つい真っ赤な耳元で呟いてしまう

「僕も君のこと、誰よりも大好きだよ」

素直に感情が表情に出る君は、真っ赤な顔で俯いてしまった

「可愛い千鶴ちゃんと二人きりなんて…僕、嬉しいな。」
「なっ、私は可愛くなんかないです!!」

否定するのは君らしいけど、そんなところも可愛らしいと思う

「…きっと他の幹部は経験出来ないだろうしね…」
「えっ?」

つい本音を口にしてしまった
君を独り占めするなんて、なかなか出来ない事だから

「何でもないよ」

…らしくないなぁ、いつもは隠せるんだけど。
思わず千鶴ちゃんに身体を預けてしまう
思った以上に、僕は舞い上がってるみたいだ

「千鶴ちゃんは、僕を魅了してばっかりだって言っただけだよ」
「…それを言うなら、沖田さんが、ですよ!」

……今さらりと、とんでもないこと言ったよね…君
言い換えたら、僕が君を魅了してるってことになる「私は、沖田さんが誰よりも…」

顔を熟れた林檎みたいにしながら、視線を僕に向けて想いを口にしてくれる

「誰よりも、魅力的だと想ってまっ…んっ…!!」

続きの言葉は聴こえない
それは僕が唇を塞いだから

「んっ、…ずいぶん大胆なことを言うんだね。千鶴ちゃん」
「いっいきなり口づけなんて、しないでください!」
「だって…君があまりにも可愛いこと言うんだもん。我慢出来なくなっちゃった」

君は僕をどうしちゃうつもり?

そんな可愛いこと言うから、煩いくらい僕の鼓動が高鳴ってるよ

「でも星空に見守られながらの口づけって、なんだか贅沢な気分だよね」
「星たちが祝福してくれてるみたいです」

君は幸せそうに微笑みを浮かべる

「じゃあ、僕たちは幸せにならなくちゃね」
「私が沖田さんのこと、幸せにいてあげますからね!」

クスクスと笑いながら君は僕に宣言する
それが言い終わるのとほぼ同時に、流れ星がいくつも姿を現した

すると君は空を指差しながら

「沖田さん、見てください!あんなにたくさん流れ星が見えますよ」
…なんて言ってる
やっぱり女の子なんだなぁってつくづく感じてしまう
僕が抱きしめてなかったら、もっとはしゃいでしまいそうだ

「それじゃあ、僕はあの星に誓うよ」

小さな君の手に僕の手を重ねる

「僕がこの世で1番、君を幸せにしてあげる」
「ありがとうございます。沖田さん」

「…だから千鶴ちゃんは僕から離れたら駄目だよ」

しつこいかもしれないけど、君が望むなら僕は君から離れるから

「…私もあの星屑たちに誓いますよ。私は沖田さんと一緒に幸せになってみせます」
「ありがとう、千鶴ちゃん。もう嫌って言っても離さないからね」
「構いませんよ。私も沖田さんが断っても離してなんてあげませんから」

お互いに微笑みながら、夜空の下で幸せを誓い合った二人
それを遥か彼方で見守る星たち

「幸せになれたら、この日…この星たちに感謝しましょうね」
「なれたらじゃなくて、なるの。だから必ず感謝する日がくるよ」
「間違えました、必ずですね」
「そうだよ。だからこれは誓いの口づけ」
「私も…」

そっと指先に、頬に…そして唇に、口づけを贈った
千鶴ちゃんも同じように、僕に啄むような口づけをしてくれる

「なんだか、くすぐったいね」

二人が幸せになるのはあと少し先の話
けれど、長い年月を生きてきた星屑たちにとってはたった一瞬の出来事

「私たちを見守ってくれて…」
「僕たちを見守ってくれて…」
「「ありがとう」」

あの日、星屑が堕ちる夜に
伝えきれない感謝の意を込めて

…あなたたちのおかげで、私たは幸せになれました…





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