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相合い傘

傘越しに濁った空を見上げながら、向かうのはある場所。

見つけた時、彼は傘を地面に置いたまま、濡れることも気にせずただ立っていた。

『なんでシズちゃんが、そんなモノの相手をしてるの』
『俺の勝手だろ。関係ねぇんだから、口出しすんな』

確かに勝手だけどさ。

『だからってずぶ濡れになんかならないでよね』

普段は匂いで分かるとか言って必ず追いかけまわすくせに、関係ないとか酷いなぁ。

まるで俺が負けてる気分になる。

『シズちゃんさ、それ放っておけないんでしょ?』
『だからなんだよ』
『…ちょっと傘持ってて』

足元にいる濡れそぼった温もりを静かに抱える。人肌が温かいのか、腕の中でうずくまる様子は親に寄り添う赤子のようだ。

『俺がこの子を連れて帰るからさ』

怪訝そうな表情をしながら、濡れないよう傘をさしてくれる。

『シズちゃんは俺の家でこの子の相手をすればいいよ』

自分でも意味が分からない。なんでこんな事を言ってるのか。

『なんで…臨也がそこまでするんだよ』

人一倍不器用で優しいから小さな事も無視できない。そんな彼を見過ごせない自分は間違いなく囚われてる。

『どうせ、シズちゃんは飼いたくても飼えないじゃん』
『………』
『簡単な世話くらいしとくからさ、相手くらいしに来なよ』
『てめぇの家にか』

なんでそんな不思議そうな顔して俺を見るかな『臨也は…嫌じゃ、ねぇのか?』
『嫌だったら言わないから。ちゃんと歩いてよ』
『…あぁ』

彼が俺の傘をさしているから、必然的に一緒に歩く事になる。

所謂、相合い傘って感じかな。

『なんか、すごく愉しいな』
『意味分かんねぇ』

だってこんな風に傍を歩くなんて、普段の俺たちからは考えられない行動だよね。

『まるで恋人みたいに見えるじゃん』
『なっ!?こ、恋人?』

何故か慌てて離れようとする様子に内心笑ってしまう。

『ちょっ、濡れるから傘動かさないでよ!』
『わ、悪い』

女の子みたいに頬を朱く染めちゃってるし、可愛いらしいな。

クスクスッ

『シズちゃんは驚き過ぎ!』
『てめぇが変な事を言うからだ』
『へぇ…』

意識してなかったら反応しないと思うよ、普通はさ。

『なんだよ、その意味深な表情は』

笑みが零れていたらしい。怪しそうに様子を伺ってる。

『んー、なんでもない。寒いし早く行こ!』
『…変な奴だな』
誰かに奪われるくらいなら、それすらも奪ってしまおう。そこに伴う感情など、なんだって構わない。

―シズちゃんの【特別】は俺だけのモノ―

彼の吐息を隣に感じながら、自宅へと道を引き返した

小さな影の下、大切な客人と寄り添うように







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