きみは笑顔ではぐらかす《派生
笑顔でいることは大切だと思う
それは一つの伝達方法
自分の気持ちを他人へと伝える仕種
楽しかったり、嬉しかったり、時には哀しみを隠したりする
理由はそれぞれ異なるものだ
津軽はいつも笑うようにしている
嬉しい時はもちろん、哀しい時は気持ちを悟られないように
『つーがーるー!』
ぎゅっとサイケは笑顔で抱きついてくる
きっとコレが本当の笑みなのだろう
だが、作り笑顔ばかりだと本当の意味での笑顔が分からなくなる
『どうかしたか?』
『津軽が疲れた顔してるからさ』
『大丈夫だから』
感情を隠してばかりで表情が減ったのは自覚出来ている
『本当に元気なの?』
『大丈夫だから。サイケは心配しすぎだ』
そんな偽りを並べながら、津軽は隣のサイケに寄りかかった
本当は大丈夫なんかじゃない
だけど言える訳がない
マスターにはあまり呼ばれず、代わりにサイケがよく呼ばれていることを知っているからこそ、旧式である津軽は恐れている
最新であるサイケで事足りるのなら己は…津軽は破棄されてしまうのでは、と
『じゃあ津軽がもっと元気になるようにお歌を歌ってあげるね!』
そう言って紡がれ始めた歌声
本来ならば誰もが気持ちを楽にするだろう言葉を乗せたモノ
だが…
『ありがとう、サイケ』
―サイケのおかげで元気になれたよ―
虚ろな言葉でそう伝えられているのかは、もはや分からない
ただ笑顔が出来ていればいいのだ
そう言い聞かせて感情を伏せる
今は辛さしか湧いてこないけれど、津軽は微笑みを浮かべて真実を隠した
title by 確かに恋だった