新スタスカ | ナノ












 
愛してる、なんて《天秤座

いつもと変わらない日常
相変わらず保健室は整理整頓していない

ガラガラッ

『失礼します。星月先生、寝てます?』
『起きてるぞ、夜久。
いきなり、【寝てます?】はないだろう。』

クスクスッ

『仕方ないじゃないですか。
ほとんど、寝ているわけですから』

手を動かしながら、彼女は小さく笑った

『だけど、夜久が来る時間には起きるようにしてるからな』

―逢う時間が少しでも長くなるように―

…なんて、この歳で思うなんて恥ずかしいから言わないでおく

『そ、そうなんですか…初耳なんですけど!』
『誰にも言ってないからな。』

…言うつもりもなかったんだが

【整理整頓する為に】なんて、ただの口実

【逢いたい】と望んだ結果なのだから

俺は勝手にそう思っている

『…二人きりの時くらい恋人として話しましょうよ』

恋愛事に臆病になっていた事が、今は嘘のようだ

『俺もけっこう我慢しているんだ』
『一回だけでいいですから!』
『…別に構わないが』

そう言った途端、パァっと夜久は笑顔を浮かべる
『ありがとうございます!』
『なんか…ご褒美をもらった子供みたいだな』

まだまだ幼さが残っている

プイッ

『子供みたいって、私はもう高校生ですよ』

少し怒気を含ませた声を出しながら、背を向けられてしまった

正直に言ったのに、気に障ってしまったみたいだ

『悪かったよ。だから怒らないでくれ』

静かに一歩ずつ近づいていく
背向けているせいで、距離が縮まっていることに彼女は気づかない

ギュッ

『なぁ、夜久。返事くらいしてくれ…』

背後から抱きしめるのと同時に耳元で呟く

『〜〜〜〜っ//』

すると、腕の中で夜久が声にならない叫びをあげている
顔を林檎みたいに真っ赤にして
…本当に可愛らしく見える

『やっぱりおまえは可愛いな』
『…星月先生の意地悪』

クスクスッ

『意地悪なんて失礼だな。
俺は本当の事を言っただけだぞ?』

窓に映る光景を見ながら、わざと俺は首を傾げてみせた

『…絶対にそれ、わざと言ってますよね』

相変わらず表情に出やすい

『さぁ、な』

好きになって、でも我慢しようとして、結局は諦めきれずに想いが通じた

だからなのか

こんなにも愛しく、幸せに感じる
彼女は恥ずかしそうにしていたのに
今は得意げに俺を見ている

『どうだろうな』
『先生、さっきから顔に出てますよ』
『…嬉しかったよ、夜久。』
『それは良かったです!たまには自分からしてみるといいですね』

ここで仕返しをしたら、また怒ってしまうだろうな

でも、本人は忘れたかもしれないが自分から頼んだ事

【仕返し】にもならないと考えればいい

『夜久』
『どうっ』

チュッ

どうかしましたか?という言葉だったのだろう
なんの警戒もせずに俺を見上げた
言葉が遮られたのは言うまでもない
夜久の唇に己のソレを重ねたからだ

『い、いきな』
『愛してる、月子』

瞳と瞳が向き合って言われた相手は、またもや真っ赤になってしまう

『嬉しかっただろう?』
『なんか…星月先生には勝てませんね』

微笑みながら呟きを漏らしている

『誰にも負けないくらい、愛してるからな』

大切な想いだから言わないだけ
軽んじて欲しくないからこそ
いつも心の中で想っている

これから先、変わらない気持ちだから

【愛してる】、なんて…

口で言わなくても分かるだろう?







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