新スタスカ | ナノ












 贈り物《蟹座

真夜中の時間

もちろん、部屋がある蟹座寮にいる
俺というか正しくは【俺たち】

今日は幼馴染みの月子たちを誘って屋上庭園で星見会をしていた

星を見上げて、勉強とか日常のことをたくさん話した

落ち着いたのは、夜の帳が空を覆う頃

夜遅くで眠いせいか、不安な歩き方だったから

寮長に相談して、【幼馴染みだから】という理由で俺の部屋に泊めることになった

部屋に着いたら、すぐにベッドへ月子を連れていく

すでに寝ぼけていたから、予想はしていたけど

「すずや…?」

「なぁ、幼馴染みだからって無防備すぎないか?」

眠りたいのを我慢して月子はあどけない顔で微笑みかける

「むぼうび…どうして?」

「だから、それが無防備なんだって」

ちょこんと座ってる月子に内心ドキリとしながら平然を装う

「私服に着替えおいて良かったな…とりあえず、月子はこのまま寝ているんだぞ?」

じゃないとおまえが危ないから

…というのが本音
一応、俺も男なわけだしさ

「すずやは?いっしょにねむらないの?」

「俺は大丈夫だからさ」

枕をギュッと抱え込んで上目遣いに聞いてくる

「月子が、ちゃんといい子に眠ってくれればいいんだよ」

いつもなら、ここまで寝ぼけなかったんだけどな

疲れが溜まっていたのか
はたまた寝不足だったか

「すずやは、どこで…ねるの?」

なぜか少し心配そうな顔で、シャツの裾を掴んでいる

…可愛すぎるだろ

「ん?俺か?」

いつも使っているベッドは月子に貸すから、必然的に床しか残ってない

「俺は、タオルケットでも敷いて床で寝るよ」

小さい頃のように一緒に寝るにはお互い育ち過ぎてる

今の状態の彼女が良くても俺は無理だから

タオルを持ってこようと立ち上がった

「どこにいくの?」

「タオル持ってくるだけだよ。すぐ戻ってくるから」

安心できるように、そっと頭を撫でてあげると

「ん…はやくね…」

小さい頃のような微笑みを浮かべながら、静かに手を離していく

「あぁ」

…アレは、寝ぼけてるだけだよな?

月子のことだからわざとではないだろうし

「天然も可愛いんだけど…場合によっては怖いな」

戻ると、ベッドの上で彼女が拗ねてる

「はやく…っていったのに」

「ごめんな、探してたら遅くなった」

「すずやなんか、ゆるしてあげない」

ガバッと掛け布団を被ってしまう

「えっ…」

「すこしうそ」

ん??

「すずやがおねがいきいてくれたらゆるしてあげる」

頬を桜色に染めながら、そんなことを言われた

「月子のお願いなら、なんでもいいからな」

「あのねっ、わたしがねるまで…てを、つないでてほしいの!」

「これだけでいいのか?」

「あと、あたまを…なでてほしい…」

「了解!じゃあ、月子は俺を許してくれるか?」

サラサラと広がる髪は、ほんわかとシャンプーの香りが薫ってる

「ん…」

繋いだ手を引っ張りながら
気持ち良さそうに瞳を閉じていく

「月子?」

チュッ

口元に寄せたかと思えばリップ音と共に柔らかいものが触れた

「なっ」

指先に触れたのは月子のくちびる

一人でテンパっている俺をそのままに、彼女は眠りについたみたいだ

こんな様子…見られてたら…

「…恥ずかしすぎて、たぶん顔を見れないな」

そんな俺の気持ちなんか知らないだろう

月子はスヤスヤと深い眠りについている

「…今日は寝ぼけてたから、な」

俺はどうすればいいんだろう…
未来が怖くて、行動が出来ない

「昔から臆病だな、俺は…」

「くちびる、柔らかかったな」

普段なら顔を真っ赤にするだろうけど、平然とやってしまった大胆さに驚いた

手を離さないまま俺はベッドに顔をつけた

近くで見ると、綺麗だなって実感してしまう

男子にはない丸みを帯びていて、睫毛も長く、肌も透き通ったように白さ
おまけに髪までいい薫りがする

「…ん……」

まだ、夢を惑っているようだ

「はぁ…」

態度で示してきたつもりだけど、行動でも示さなきゃ分からないかな

もし想いが届くなら
未来で彼女の隣に俺が居れることを願ってる

だから今はこれだけ

コレは小さな贈り物
ほんの少しの誓い

チュッ

気づかれないように、優しく繋いだ指先にキスをする

「今はおやすみ、可愛い月子」

愛しさに気持ちを膨らませて、静かに眠りについた








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