新AMNESIA | ナノ












 
灰色を忘れた世界で夢想する

この世界で君と出会えて、写真とは別の楽しさと幸せを分かち合えた。

あの日を境に、君を捜し求めてパラレルワールドを巡る。

俺か、マイが死ぬ。どれだけ世界を巡ってもループが続いた。それでも…奇跡はありえないのに、希望を捨てきれないんだ。

「ウキョウ、一緒に帰ろうね!」

記憶の中でマイの声が響くばかり。今ではありえない過去の幻。その君は…

君を見つけた時には、俺じゃない他の相手と親しげに過ごしている。辛くない、なんて嘘は言えないけれど。

自分で否定した現象が還る前に、世界が君を消し去らずに二人で生きたかった。あんなにも幸せだった日常を壊されたなんて許せなかったんだよ。

だから探した。最初の世界でなければ俺を知るはずないのに、心は君を求めてる。

「久しぶりだね。はじめまして、マイ」

声をかければこちらを見て不思議そうにする。

「えっ…と…はじめまして、ですよね?」

何回そんなやり取りをして、見つめられたんだろう。

「あぁ、この世界だとそうなるかな」

「この世界…?」

「ごめんね。いきなり困らせたみたいだ。」

「以前、どこかで会いましたか?お名前は…」

「会ってない、よ。俺はウキョウって言うんだ」

8月25日を無事に生きてくれれば、死の運命から逃れてくれれば良かった。

本当はずっと一緒に過ごしたかったけれど、相反する運命の二人を神様が見逃す訳ないから。

君と出逢うのは、これで最後。

幾度となく強制的に殺され、君を殺し続けた生もこれで終わる。

そう諦めていた矢先に、ニールが"原初の世界の巻き戻し"を提案した。それが唯一の希望だから、と。

「ウキョウ〜」

名前を呼ぶ声は、どこまでも染み渡るように響く。

「君は楽しそうだね、マイ。どうかした?」

「二人で一緒に写真撮ろうよ!」

「僕は構わないよ」

運命が還ったあの時、君とニールに救われたからこそ今がある。アイツが出てくることもなく、幸せそうに笑う君の側に居られる。

原初の世界で付き合っていたように、こんなにも幸福を感じているのは奇跡のようだ。

「ウキョウの写真もたくさん撮ろうね」

「その流れだとやっぱり俺も被写体に?」

「うん!」

パシャッ

手にしたデジカメをこちらに向けたマイは、シャッターを押していた。

「あ…」

「早速ウキョウの写真撮っちゃった」

画面でデータを見ながら話す表情は、どこまでも楽しそうに見える。

「マイ?」

「いつも私を撮るばかりだからレアだよね」

「…マイと一緒に映るんじゃなかった?」

「もちろん、一緒に撮るよ!」

俺よりも小さい君は、ぎゅっと掌を握りしめた。

「空白の時間を追い越すくらい、想い出を写真に刻みたいの」

「ふふっ…マイと二人だけの想い出だね」

「記憶がなかった時間よりも幸せになろう」

いつか夢に見た世界へ、二人で幸せを叶える為に歩む道のり。

オセロのように白と黒に分けられたらいいのに、


title by 空想アリア







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