選択の小瓶は赤い扉の前に
※童話パラレルワールド設定
‐選択の小瓶は赤い扉の前に‐
選んだのは赤い扉。
開いた目の前には大きな森が広がっていて、いつの間にか私は赤ずきんの格好をしていた。
「ここは誰の世界なんだろう」
細い道ばかりがたくさん並ぶ森。歩きやすい道を探して、なんとなく気分で進んでいくと…
「あれは……シン?」
ふわふわのファーが首元を覆い、耳としっぽが生えた姿で彼は退屈そうに林檎を見つめている。着崩れた格好が今の姿によく馴染んでいる。
「シン!」
「やっと来たな。マイは赤ずきんか」
「うん!待っててくれたの?」
「他にする事ねえし、おまえに会いたかったから」
「ありがとう」
ピクリと動いた耳はふさふさとした毛で、とても触り心地が良さそうに見える。ちょこんと生えたソレが彼を可愛く感じさせる。
「ん」
顔には出していないけど、しっぽが揺れていて…内心では喜んでるのかな、そうだったらいいなと私は想像とはいえ嬉しくて仕方がなかった。
「ねぇ、耳触っていい?」
「駄目」
「どうして?」
「…………くすぐったいから」
恥ずかしいのか、そっぽを向いて呟くシンの様子は可愛いの一言に尽きるくらい。もちろん、数少ない機会に我慢できる訳がなかった。
「ごめん、やっぱり触りたい!」
「はぁ!?…ってやめ…っ」
触ってみると思ったよりも温かい。ピクピクッと動いたり、立ったり垂れたりして本当に可愛らしい。
「だ、から…触るのやめろって」
「ちゃんと耳が生えてる」
「はぁ、もういいや。今度は俺が触る」
そう言うや否や、抱きついてきた彼。
伸ばされた腕は身体の線をなぞるように、首から腰までを少しずつ下がっていった。
「ちょっ、シン…ここ外だよ?」
「あぁ、そうだな」
厭らしい笑みと啄むだけの口づけに、これからの事を予感しながらされるがままに身を任せていた。
「んっ…さっきの仕返し?」
「まぁな。狼らしくマイを可愛がってやるよ」
普段なら絶対にありえない格好、ほんの少し可愛く映る姿だけどやっぱり雰囲気は男のソレで。恋人として意識してしまったら、"逃げる"という選択肢はあっさりと消えてしまった。
結局狼になったシンに×××され、疲れきった私は霞む視界に瞼を閉じた。
彼の香りに包まれた場所が夢の中へ誘うまでの数秒間。意識を失う直前に見たのは優しい表情をした狼の姿。
(過去拍手文)
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