壊したくて
この手で捕まえた君の命。
「あと少しだったのに、残念だったなぁ」
目の前で崩れ落ちた身体を色鮮やかな赤が浸していく。貫いたナイフから赤い雫が伝って、おまえの頬を汚す。
「ど、う…し……っ…」
無理をして話す度に口から溢れてくる赤。話さなきゃいいのに、もう目を開く事さえ辛いはずだ。
「こんな運命、望んじゃいなかった」
錆び付いた香りが、流れていく血が、命が尽きかけていることを知らせる。
「……ウ、キョ…ウ」
「最後までオレを信じるからだよ」
足元で生気が失われつつあるマイは、もう意識があるかどうか怪しかった。
「す……きだ、か…ら」
「その相手に殺されるのに好きか?」
「……ん…っ」
そろそろ限界が訪れたらしい。反応が鈍いマイに、最後だからと触れた。思った以上に無理をしていたようで、身体はひんやりと冷たい。
「馬鹿だな、マイは…」
25日までに世界が消去するマイの命。
天災であったり、事故や殺人。全てがオレにとっては苦痛でしかない。
好きだから、消される最後の瞬間まで、オレを記憶に残して欲しかったんだ。
また次の世界で巡り会うだろう。そして命を奪うのは自分。
「また、どこかで逢おうぜ」
これがマイの幸せかなんて分からない。
でもオレは、自分勝手な願いを叶え続ける。
誰かに殺させるくらいなら、血に染まるのはオレでありたい。
壊したくて、(好きだから愛しくて、好きだから「もっと」と求めてしまう)
title by 空想アリア