tragic factor
‐相反する運命‐
それが何の為に在るかなんて、神様にしか分からない。
俺たちが望まなくても、きっと選んでいたのかもしれない。
「ウキョウ、どうして悲しそうにしてるの?」
「あ、えっ…と、考え事してたんだ」
この世界のどこかで、絶対に結ばれない二人。
俺と君に与えられた運命の輪。
「自分が死ぬよりもマシだろう?」
アイツはよく言っていた。自分の命を引き換えにしてまで、彼女を守る必要はない。マイにそこまでする価値はない、と。代わりに痛みを感じて、命を失って、何の意味がある?
何度も聴いた自分の声。
頭の中に響くそれは、あまりにも純粋で残酷なもの。
「俺と過ごして、マイは楽しい?」
「とても楽しいよ。それに、ウキョウって不思議な人だから面白いよ」
ふわりと優しく微笑む彼女は、携帯を覗きながら言葉を紡ぐ。
「一緒にいるだけで安心するの」
「そう…俺も同じ気持ちだよ」
どの世界に渡っても、大切な人はマイだけ。
原初の世界で君を失ってから、何度も見失った存在。世界が殺し、俺自身が殺した幾つもの世界と長い時間。
ずっと恋い焦がれ、想いを膨らませていた。マイを求めて、唯一出来たのは見守るだけ。
「どうして、こんなに温かい気持ちになるのかな?」
何を思い浮かべていたのだろう。
まだ君の記憶は戻っていない。だから…俺との時間は還っていないはずだ。
写真に映る君は、俺の隣で幸せそうにこちらを見つめる。
恋人としての思い出が、今は一人だけの過去になってしまった。
生きてさえいれば会える。それも限られた時間しかないけれど、諦めていたから我慢できていたんだ。
「その答えはマイにしか分からないよ」
「残念。ウキョウなら分かるかと思ったのに」
小さい子供のように頬を膨らませて、呟く仕草ですら愛らしいと思う自分。我慢にも限界がきているらしい。俺が本当はもっと触れたいと思ってる事、気づいてくれてると嬉しい。それが叶うことは難しい事でも、光を求めてしまう。
「俺は未来なんて、誰にも分からないと思うんだ」
口には出せない気持ちが、痛いくらいに切ないんだ。
想うことは許されても、報われないまま終わりを告げる世界。
いつか俺のせいで、マイは涙を流してしまう。
君の悲しませたくないから、終わりを約束された日まで君を見届ける。
覚えていなくてもいい。
俺の分まで生きて、幸福に満ちた時間を過ごしてほしい。
tragic factor(悲劇の要因)
愛されたいと願った
title by たとえば僕が