A lonely angel
※死ネタ
こんな時に限って、雲ひとつない晴れた空。太陽の光は嫌なくらいに眩しく照らす。
「どうして、マイ一人になったのかな?」
いつもの私服姿で目の前に君がやってきた。僕から会わないようにと避けていたのに、小さな努力は泡と化した。
「二人だけで話したかったから」
淡々と話す様子に泣きたくなる。
「ウキョウは私が嫌いになった?」
その言葉に呆れて、小さく溜息をついてしまう。何度も忠告はしたはずなのに。
「…嫌いになんてならないよ」
「良かった」
俺がマイにとって1番危険だと、アイツが君を殺そうとしている事を伝えておいたにも関わらず…現れてはいけない、恋しい姿が映る。
何の為に今まで予防線を張っていたと思ってるのかな?
「今日が1番危険だって、俺は言ったよね」
「うん。ちゃんと分かってる」
「それなら、どうしてっ」
「この世界が、ウキョウにとって最後になるんでしょう?」
「………そ、う…だよ…」
それは紛れも無く自分で告げた事実。
繰り返されるパラレルワールドの旅に絶望した俺への提案。
この世界の終わりが俺自身の幕引きになる。運命を曲げられないなら死を受け入れるだけ。
「最後に、ウキョウと逢いたかったの」
君の口から零れたのは終わりの合図。
「なんでマイがそんな事を言うの…」
どうして穏やかな微笑みを見せているのか、意味が分からないよ。
どちらかの死を告げているのは明らかだ。君は他者の命が失われる場面で笑っていられる人じゃないよね…?
俺の死を望むなら、俺からも逃げなければいけないからこの状況はおかしい。
「もう一人のウキョウでもいいよ」
静かに歩み寄る君は俺の手に触れて、そのまま口づけていた。
感じた甘さの余韻は一瞬で消える。
「私を殺して、あなたは生きて」
自ら首筋へと誘導させて、なお微笑みは消えない。本当なら泣いてもおかしくないのに、君からは笑顔が消えないんだ。
「……っ、マイ」
オレが内側から暴れようとする。獲物は自ら刃にかかる。アイツは待ち望んだ、苦しみからの解放を喜んでいるのだろう。
俺の意思とは別に力が込められていく感覚。肌へ触れた自分の掌が、君の時間を奪う。
「嫌な、思いを…させてご、めんね」
かつて受け入れなかった事を、君が受け入れようとしている…そんな資格なんてないのに涙が止まらなかった。
「会えなくなるけど、私はウキョウが好き」
「これで……さようなら、なんだね」
もう何も言わなかった。
ただ瞳を閉じて、マイは微笑みを向けるだけ。それが答えだった。
「俺も…マイだけを愛してる」
‐ありがとう‐
命が潰えるその瞬間さえも、最愛の彼女は優しいまま。
A lonely angel(独りぼっちの天使)
それでも君は微笑った
title by たとえば僕が