*淫らな唇に蓋はいらぬ
なんで、またこんな格好しなきゃいけないんだ…
百歩譲って、仕事ならまだ諦めがつく。自分を売り込む為なら仕方のない事だ。でも今は絶対に違う。
「ずいぶんお洒落してるんだな、唯ちゃん?」
「うるせえ!その名前で呼ぶな」
那月の趣味で無理矢理に女装させられたあげく、肝心なアイツは不本意とはいえ砂月と入れ替わってしまった。
「だいたい那月のせいじゃねえか」
「そんな事は知ってる」
今の俺は上から下まで女の格好になっている。着ているのはレースたっぷりのワンピースと大きめなリボンの髪飾り…それからロングウィッグとフルメイク。
「おまえの見た目なら…その格好も有りだな」
ぱっちりとした大きな蒼い瞳と細身の身体が余計に女らしく見えるのだろう。
口元をニヤつかせて、頭から爪先まで視線を巡らせる様子は怪しい。
「な、なんだよ!その目は…ってかその手は」
「あぁ?文句あんのかよ、翔」
「文句あるに決まってる!」
「触られるだけで感じてんだろ」
「んな訳あ…っ」
首筋を湿ったものが辿る。輪郭から首、徐々に下がるソレが布の上からある点を湿らせていく。
ピチャピチャとした音、布を挟んだ肌で感じる微妙な生暖かさと吐息が身体を侵す。
「ぁ…んっ、ぁ…砂…っ…月」
「翔はもう限界か?」
意地悪な表情を浮かべたこいつは未だに行為を止めない。服が遮る感触がもどかしくて、でも素直に言うには羞恥心が勝っていた。
「ん…ふぁ…っ」
熱い。
指でなぞられ舌で辿る、掌が触れた場所がザワリと熱を持ったように疼き始めていた。
「っ…は、ぁ…ぁ」
「声、抑えるなよ」
「ぁ…ん……ふぁ…」
「もっと喘いで、俺にねだってみせろ」
自分の腕を噛む事で、変に高い音を塞いでいたのに。砂月は楽しそうに蓋を外していた。
「やっ…んぁ、ひゃっ、ぁっ」
「これからが本番だろ?楽しもうぜ」
止まることのない音に機嫌を良くした彼は、獣のごとく俺を追い詰めていく。
title by 空想アリア