新うたプリ | ナノ












 
微熱に重ねた恋心を

最初はただ馴れ馴れしい人だなと、素がHAYATOみたいな明るさと人懐っこさを持つ存在だと思っていた。

ただ、それだけだった。

同室というだけで彼はAクラス、私はSクラス。授業中は会うことない。
自分のないモノを持っている彼が羨ましくて、自然と意識を向けていた。

即興で紡がれる歌はとても彼らしい素直な歌で、幾分足りないところはあっても気持ちに響くものがある。

「トキヤ〜!」

「うるさいですよ、音也・・・なんですか?」

今では想いが通じて、進展したと言えば進展している方なのだろう。

相変わらずの人懐っこさにはまだ慣れないけれど。

「どんな曲を聴いてるのかなって思ってさ」

「あなたが気にする必要ないと思いますよ」

ひょいっと、外した片方のイヤホンを彼は当たり前のようにつけるから自然と体を寄せることになった。

「ちょっ!?」

しかも背後から抱きしめられる形で、肩先に顎をを乗せている。

それだけで心臓の音は騒がしくなって、落ち着かせるのは難しい。
表情を隠して気づかれないようにするので精いっぱいなのは、相手が音也だから。
早く離れたいのに、時折紡がれる歌に耳を澄ませてしまう私も矛盾している。

「なぜ、あなたが聴く必要があるんですか・・・」

「やっぱり気になる。それにこれってトキヤの歌だよね!」

「私が何を聴いていても音也に関係ないでしょう」

「俺はトキヤの歌が好きだから聴きたいよ」

肩に感じる彼の気配に、温もりと触れたくなる衝動に駆られそうだ。

少し動けば触れられる距離で好きな相手が目を閉じて音に夢中になっている。

なんとなくキスする時みたいだと思ってしまう。

クスクスッ

「トキヤってば、むきになりすぎじゃない?」

「なってません!それに音也が無自覚なのがいけないんです」

素で無自覚なのは恐ろしいと思う。
こちらが理性で耐えようにも、威力がとてつもないのだから。

チュッ

結局は頬に手を伸ばして、そのまま唇を重ねてしまう。

いきなりのことに瞳を見開いた彼は、徐々に目蓋を閉じて甘さに酔っているようだ。赤い髪に指を絡ませると幸せそうに微笑みを浮かべる。

「んっ・・・・ト、キ・・ふぁ・・ん・・・っ」

クスクスッ

息継ぎする間も与えなかった。苦しさを訴える彼に胸を叩かれたので唇を離した。

「はぁ・・・はぁ・・・」

銀糸で繋がっていた、濡れた唇で未だに思考が追いついていない様子が可愛らしい。

「だから言ったでしょう?音也がいけない、と」
「トキヤのいじわる」

むーっと、唇を尖らせた彼は頬を薄紅色に染めて拗ねている。

「でも、こんな私も好きなのでしょう?」

今度は私の方から抱きしめると彼の体温が伝わってきた。
感覚を研ぎ澄ませれば、お互いの鼓動も感じられる。

「うっ・・・そ、そうだけど」

「可愛いですね。ん・・・」

「んっ」

口づけを降らせながら紡ぐのは愛の言葉

「私もこんなに可愛い音也が好きですよ」

後日。

「おまえらは少し自重しろよな!」

「そうですか?」

「見てる、というか聞いてるこっちが恥ずかしいだろ!」

「・・・・・・努力はします」

どうやら、ずっと廊下で待っていたらしい。

空気を呼んで入らなかった彼らは、声だけを聴いていて翔は恥ずかしさに耐えられず部屋に戻りレンはそれを面白がって見ていたようで。

「それにしても、おチビちゃんは反応が可愛かったよね」

「う、うるさい!!」

レンにからかわれる翔は耳まで真っ赤にして反論している。
見ていてとても微笑ましい光景だ。

「翔ちゃんは全部可愛いですよ〜」

「げっ、那月の声!!トキヤもレンもじゃあな!」

遠くから駆けてくる四ノ宮さんの声が颯爽と近づいてきたと同時に翔は急いで逃げていく。毎回飽きもせずに行われるそんな日でした。


title by 空想アリア 求愛より







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