*息も止まるくらいに
※襲い受け
いつもと同じような始まり方。私が本を読んでいる時に限って、彼が楽しそうに弾んだ声で名前を呼ぶ。
「ねぇ、トキヤトキヤ!」
赤い瞳を輝かせてこちらを見る様子は、何か期待しているようだ。
「何もしませんよ」
「俺まだ何も言ってない」
「あなたがそんな声を出す時は、ろくな事がありませんから」
「うわぁ、トキヤってばひどいよ〜!」
「ひどくて結構です」
「トキヤのケチ」
肩を落として口を尖らせる辺り、彼らしい幼さがうかがえる。大型犬がしょんぼりとしているようにさえ見えてしまう。
「……話を聞くだけですからね」
「やった!ありがと、トキヤ!」
あっという間に笑顔を浮かべて、興奮して顔を赤くする彼。余程嬉しかったようで、勢いよく抱きついてきた。
「音也?苦しいんですが」
「だって、トキヤが優しいからさー」
首筋に髪が当たってくすぐったくて。それに、心地好い声がすぐ側で響く。布越しに自分と彼の体温が交わって、小さく微笑んでいた。
「それで?今回はどうしたんですか?」
「あのねっ」
そう言って腕を解いた彼が自分の鞄から取り出したのはお菓子の袋。
「ポッキーゲームがやりた…」
「私はやりませんよ。お断りします」
「ぶー」
「聞くだけと言ったでしょう」
「一回だけだからいいじゃん、ねっ!」
「しつこいです。やらないと言って、」
「えいっ」
口に突っ込まれた甘いソレ。先程から断ってるにも関わらず、続行するとは…彼もいい度胸ですね。
「折ったら駄目だからね」
少しでも歯を立てれば、ポッキーなど簡単に折ってしまえるのに。
「んーんーっ」
「トキヤは、そのままくわえてて」
差し込まれたのは棒状のお菓子。長さなんて、たかが知れている。目の前に顔を寄せられただけでも手を出したくて仕方ないのに…
彼が菓子を食べ進める度に近づく距離は、自分が動かなくても唇が触れてしまう事を私に伝えてくる。
ポキッポキッと軽い音が響いた。
「んっ」
そして、触れたお互いの唇はひどく熱い気がする。呼吸に合わせて舌を潜らせれば、先程まで彼が食べていたイチゴ味。特有の甘さを味わいながら口の中を這うと、どちらのものかは分からない唾液が唇から伝っていく。
「んぅ…っ…ぁ」
「んっ…トキヤ、顔真っ赤だね」
「う、るさいです、よ」
自分も顔を赤くしてるくせに、よく言うものだ。
「いつもは俺が弄られるからかな…新鮮かも」
「新鮮って、あなたという人は…」
別の色を帯びてきた瞳を細めて見下ろされる。いつもは私がいる場所に彼がいて、ほんの少しだけ背筋がゾクリとした。
「でもね、やっぱり物足りないんだ」
トキヤ…
掠れた声で呟かれた名前、訴えるのは本能。
「さっきのトキヤが色っぽいせいだよ」
「疼いて我慢できませんか?」
クスクスッ
「トキヤは?どうもしないの?」
身体に跨がって、確かめるようにツーっと指先が下りてくる。鋭敏になりつつある感覚が、伝えてくるもどかしさ。
「音也!」
「ねぇ…楽しいこと、しよ?」
「おとっ…!?」
焦る私を気にせず、彼は服を剥いていく。それはもう獲物を捕らえた肉食獣のようです。
最終的に私が彼を美味しく頂きました。散々弄り続けて喘ぐ様子はとてもいい…たまたまあった菓子も突き挿せば余計に声を出して、私だけを求めてくる。
あとから見てみれば、蜜壷から私と彼が出したモノとイチゴ味のソレが溢れ出していた。
まるで処女を奪ったような気さえして、私は耐え切れずもう一度ごちそうになりました。
本当に…音也は可愛くて仕方がありません。
title by 空想アリア