*狼まであと何秒?
先生方への用事を済ませ、やっと部屋に戻ることが出来た。
扉を開けたそこでは音也が一人、暑さを紛らわせようとアイスを食べていたらしい。
「トキヤも食べたいの?」
つい、じーっと見つめてしまうと何を勘違いしたのか。私もアイスが食べたいんだという発想をして、彼らしい平和な考えだなと苦笑を零す。
「いえ、別にそういう訳ではありません」
「そう?ならいいんだけどさ」
そう言って彼は再びアイスキャンディーを舐めている。
口を開く度に垣間見える舌がアイスを舐めとる様子は別の…とてつもなく卑猥な光景を連想させた。
「ん、ふ……トキっ、ヤ…ぁ」
「もう…足りませんか?音也」
揺さぶる身体、腕の中で喘ぐ彼に欲望は募るばかり。壊さないように、けれど熱いソレを解放したくてたまらない感覚。
「ぁ…もっと…激し、く…んっ…して?」
たった少しの理性を崩したその言葉で、その日も私は快楽に溺れていったのでした。
今のうっすらと汗ばんだ肌とチラリと見える赤い舌が脳内で思い出されるソレに重なる。一人悶々としていたら、ボトッと音が聞こえた。
「あーあ、食べるの失敗しちゃった」
視線を向ければ、もったいないよねーと呟く彼が腕に舌を這わせてアイスの名残を味わっている。
この人は私の理性を試しているのでしょうか。
…いえ、相手は音也です。
無意識に決まっていますよね、となんとなく自問自答してしまう。
「音也」
「ごめんトキヤ!今片付けるからさ」
怒られるとでも思ったのだろう。手を伸ばせばビクリと肩を揺らして上目遣いでこちらを見つめる。
それがギリギリな冷静さを失わせる事にも気づかずに。
ピキッ
してはいけない音が、私にしか聞こえない音がした。他人には頑丈に出来ている壁は彼にあっさりと壊される運命のようだ。
「片付けは…後にしましょう」
「えっ、でもベタベタするよ?」
「構いませんよ」
「うん??」
為すがままに腕を捕われた音也はクエスチョンマークを頭の周りに浮かべる様子はとても可愛らしい。
ペロッ
「ちょっ、とっトキヤ!」
「どうせ…もっと汚れますから」
「は?って…待っ!?」
彼の唾液で濡れた場所に同じように舌を這わせれば、面白いくらいに反応を見せる。
その一瞬で彼を床に組み敷いた私も相当、欲に忠実になってしまった。
「では、いただきます」
我慢できなくなるのは、大好きな音也のことだけ。
あなただけが私と快楽を分かち合えるんですよ?
title by 確かに恋だった
無防備なきみに恋をする5題