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恋情に狂わされた唇《砂月

ソファーで安らぐ短い休息。

那月を休ませる為に、俺が表へ現れる時間。暗闇から光へ浮かび上がれる限られた時。

「こんばんは、砂月くん」

瞳を開ければ隣には春歌がいた。なぜか手を繋いだままで…

「どうして手を繋いだままなんだ?」

「私が繋ぎたかったからです」

一回り小さな掌が少しだけ強く握るのは俺の手。わざと嫌われるようにしても触れてくる事に、どうしようもないほど嬉しくなる。

「そうか」

顔を近づけると恥ずかしいのか、春歌は目を閉じて口をつぐむ。それを無視しての唇を重ねた。

「……っ…」

「ん……ふぁ…ん…っ」

舌を絡ませて深く口づけると、瞳を閉じてお互いの吐息を分かち合う。溶けてしまいそうな甘いキスを交わす。

チュッ

息が辛くなる頃に唇を離した。そしつ二人の間を銀糸が繋ぐ。それを見つめている春歌は、頬を桜色に染めて瞳を潤ませた表情。胸の奥で欲望が溢れてきそうだ。

「おまえって本当に怖がらないな」

「怖がるって、何を、ですか?」

いまだに呼吸が荒い。慣れない事に身体が追いついていない。そこがまた可愛いと思う反面、俺以外が見たら気が狂いそうだ。

惚れた弱み…普段なら落ち着いてる心臓が騒がしくなるくらい威力は強力だった。

「俺の事」

部屋を静かな風が通り抜けた。それがどこか心地好くて瞳を閉じる。

「砂月くんは怖がって欲しいんですか?」

「別に…どちらでもいい」

最初は周りと同じだと、どうせ俺を怖がるだろうと思っていた。だが、こいつは何も変わらない。多少怯えても、那月の時も俺の時も同じだ。

クスクスッ

「私は怖がりませんよ」

「…勝手にしろ」

だからこんなにも愛しい存在になってしまった。春歌だけが俺を、那月ではなく砂月として認めてくれるから。

「あなたは不器用だけど優しい人ですから」

「俺は…別に優しくなんかない」

クスッ

「少しだけ砂月くんが可愛く見えます」

「煩い…またその口塞いでやろうか?」

「砂月くん、愛してます」

チュッ

すでに至近距離だったからか、一瞬だけの唇に触れたのは春歌のソレ。

「ふふっ、ちゃんと塞げましたね」

楽しそうに告げるおまえに、俺が仕返しをするのは言うまでもない。

「それだけじゃ、全然足りねぇ」

「きゃっ!?」

…リミッターを外した春歌が悪い。今度は手加減なしで可愛がってやろうか。好きなだけ喘がせてやるから、せいぜい楽しみにしてるんだな。

後で目を覚ます那月に春歌はどんな言い訳をするのか。

きっと真っ赤になって焦るだろうな。想像して小さく笑いながら、俺は春歌を抱えて寝室へと向かった。


title by 空想アリア 求愛より







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