君が為に手を繋いで
街中を彼と、トキヤさんと並んで歩く。
こうしてみると、芸能活動をしてるだけあって輝いてるなあとつくづく思う。
すれ違う度に男女問わず、こちらに視線を向けられる。彼はHAYATOとしても慣れているせいか気にもしていない。
たまたま早乙女学園で出会った私だけど、田舎に住んでいた事もあってオシャレはあまり得意ではない。
「春歌は他に何か買いますか?」
「いえ大丈夫です」
「分かりました。では行きましょうか」
そう言って足を進める彼は、私に合わせてゆっくり歩いてくれる。たまに触れ合う指先が温かくてほっとする。
クスッ
「そんなにじっと見つめられると照れますね」
「えっ?すいません。トキヤさん」
「謝る事ではありませんよ」
「はい…きゃっ!?」
「春歌は手を繋ぎたかったのでしょう?」
ずっと視線が手を向いていましたよ、と明るい口調で言われて気分は恥ずかしさでいっぱい。
一回り大きな掌が私の手を包み込む。節の太くてスッと伸びる長い指はとても綺麗で…
そこまで考えてから顔が赤くなるのを感じた。私は何を考えてるんだろう。さらに恥ずかしい事を思い浮かべそうになって、違う違う、と首を振る。
「あ、あのですね。トキヤさん」
歩きながらこちらにかける声はとても優しくて穏やかなモノ。
「あ、あの、指が…」
彼の指が軽く絡められていて、いわゆる恋人繋ぎになっている。手を繋ぐだけでも鼓動が煩くなるのに、これは…
「せっかくですから恋人繋ぎにしてみました」
「恥ずかしい…」
「こんなに真っ赤になって、春歌は可愛いですね」
「可愛くなんてありません」
呟く声が心地好くて、つい流されてしまいそうになる。
チュッ
腕を引き寄せた彼は繋いだ指先に、薬指にキスをされた。
「ト、トキヤさん!ここ外ですって!」
「これくらい大丈夫です。それに、」
ポケットから何かを取り出したかと思えばそれはピンキーリングだった。花のモチーフが模った指輪を嵌める表情はとても彼らしい、幸せを讃えるような笑みで…
「誰にもあげないでくださいね」
その指輪も他のあなたの全ても、私だけのモノですから。
「…誰にもあげるわけないでしょう?」
誇らしげな彼が、何よりも大切な人。私だけのモノをくれるあなたに、私はあなただけの曲を紡ぎます。
title by 空想アリア 求愛より