一瞬の揺らぎ。
「具体的な効果は?」
「古代種の先生方なら一発で分かるわよ」
「俺から先生たちに聞けって言うの?」
「のんびりしてるからいけないんでしょ」
彼らが私に目をつける意味、稀有な存在がどんな扱いを受けるか。
調べれば一目瞭然…所詮人間である限り、枠を越えるのは夢であるから希望になる…研究者の類やら独占したがる存在がいる以上、本人には害としかならないもの。
されど、夢に縋る人々は属性を知ればきっと私個人を見ようとしないはず。
ごみたちが来るまでは、せいぜい楽しむわ。仕掛けられたらお返しはする、それだけの事。
無駄に数はいるし、こちらから面倒を起こす気にはならない。イリスの所在を蒔くのは周りを軽視しすぎ。
「知らないままでいたいのならご自由に」
“遊び”は好きよ。お互いに楽しめるし、相手を試せるから一石二鳥だもの。
「はいはい。後で聞いてくるよ」
「それが最も簡単な方法ね」
…あの二人なら確実に笑いそうだけど。
「また、ずいぶん手の凝った事をするね」
「私は楽しいから気にしないで」
行動にしなければ、どんなに小さな願いも叶わないものでしょう?
“遊ぶ”のは私の手段。他の誰かなら迷惑でも、あなたにとっては好都合な愉しいゲーム。
「またイリスちゃんは隠し事?」
「アルバロには隠し事がないって言うのかしら」
「そこを確定してる君がやっぱり面白いな」
二人だけだからか、瞳が嫌な光を宿して笑みを描く。
「楽しいからって箍を外さないでよ」
遊びを事件にした挙げ句に、事態の鎮圧するのは面倒で疲れる。何しろ相手が危険度高い奴だからね。
「もし、そうなったら…イリスちゃんが止めるしかないよ」
だから、頑張ってね―とか気楽そうに言ってくる彼。
あの様子だと退屈する前に、自ら許される限度を越す可能性もある、か。
「かなり面倒だろうけど、アルバロらしいね」
「まぁ、その前にコレを調べるけどさ」
眉を下げるくせに声のトーンが…うん、楽しんでるよね絶対。
「いってらっしゃい」
「何言ってるのさ、君も一緒だよ」
「アルバロがいいなら」
勝手に手を握られた、しかも何故か恋人繋ぎで。周りの視線が痛かったのは言うまでもないけど、これも遊びだと思えばいい。
それらしく指を絡めて、彼へと満面の笑みを向けた。
退屈と引き換えに危険な自由を選ぶなら、どんな出来事も“遊び”の内…でしょう?
陽炎を踏む、一瞬の揺らぎ。(きらめく、まだ始まったばかりの永遠へ)
title by 空想アリア