気紛れ案内人と迷いの森
遊ぶには申し分ない相手。
いつも周りにいる連中なら、警戒心まる見えでゲームなんか仕掛けようともしない。
だからって俺から何かを起こしても、ユリウスくんは悪戯にも気づかずマシンガントークを繰り広げるし、殿下やラギは直感的に避けている。
まぁ…殿下はファランバルドの王子、ラギくんはハーフドラゴンなだけあって察知するのが早い。でも引っかけるのが難しい分、面白みが増すというものだよね。
エストくんに限ってはいつも無関心…稀にイリスちゃんの事で弄ると表情豊かになるけど、基本的には反応が薄いからつまらない。
あの中ならやっぱりルルちゃんとノエルくんが面白かったかな。
日常茶飯事になったソレに俺が飽き始めていたのも現実。
「何度も見たことある反応は刺激が足りない」
そんな時に何かと悪戯を仕掛けていた彼女から声をかけてきた。
珍しく楽しませてくれると、どこかで期待している自分がいる。退屈しのぎに乗ったゲームとはいえ想像以上に面白そう。
「イリスちゃんは手強いね」
『そうかな?』
『せっかく面白くしてみたのに』
目の前に広がっていたの予想を超える光景。わざわざ魔法で残された跡を追って湖のほとりまで来たけど、見てしまったソレに後悔した。
クスクスッ
『貴方にしては面白い顔してる』
「イリスちゃんが思った以上に力入れてるから」
『ちゃんと楽しいでしょ?アルバロ』
「まぁ、よくこんなに準備したね」
本人が徹底的に姿を眩ませてくるのが定番。そう予想していたのに目の前へ広がる光景は違った。至る所に何十人もの彼女が散らばって、あちらこちらから笑顔を向けている状況。
『すぐに貴方が飽きないように』
『簡単に私が捕まらないように』
『皆をつくったんだよ』
よく観察してみれば一人一人がある程度は単独で動いていた。隣同士で話すのも居れば、静かに微笑んだり、橙色の髪で遊んでいる彼女たち。その姿といずれかの視線がこちらを向いてるのは変わらない。
『これで少しは楽しめるでしょ?』
「君って魔法の使い方が変わってるよ」
『ま、半分以上は趣味だけどね』
『だから余興にはちょうどいい』
『ちゃんと隠れ鬼にもなってるから』
「本当に、この中にいるのかな?」
『ヒントは教えないよ』
『アルバロが自分で探さなきゃ』
確かに気配は存在しているけど、この中にいるなら簡単すぎる。存在しているというよりか、全員から同じ気配がしている。探すのは一筋縄にいかないらしい。
『さて………』
『アルバロは私を、見つけられる?』
title by 夜風にまたがるニルバーナ