目覚めの朝に祝福を
カーテンの隙間から朝陽が入り込む
光に慣れない瞳は自然と細まる
「んっ……眩しい」
今日は休みなのだからまだ寝ていても問題はない。そう思い寝返りをしようとしたけれど叶わない
何か見てはいけないような光景が見える。なぜ自分の腕は彼を抱きしめているのだろう
目の前で静かに眠るのは大好きな彼
「えっ!?な、な、」
「ん……ルル?」
「なんでエストが居るの!?」
彼が居るという事はここは女子寮じゃない。まだ記憶がぼんやりしていて詳しく思い出せないけれど
「…おはようございます。朝から貴女は騒がしいですね」
「失礼しちゃう!…じゃなくて」
「休日くらい問題ないでしょう?」
そういえば、先生に無理言って部屋を借りたような…でも、普段はあれだけ恥ずかしがるのに今は真逆だなんて心臓に悪いわ
「同じベッドで眠らなくてもいいでしょう!」
「不可抗力です。貴女が寝ぼけた結果こうなったんですから」
そう呟く彼はいまさらのように顔を真っ赤に染めている
「じゃあ…なんでエストはここから逃げないの?」
「逃げる必要がありませんし…たまにはいいかな、と」
そう言って頬を寄せる彼は年相応でなんだか微笑ましい
クスクスッ
「エストって甘えん坊さんなのね」
口元を緩めながら、ついつい頭を撫でてしまうのは癖。当たり前のような人との接触がなかった彼は、いつも照れて口では嫌がる
でも、いつもされるがまま触らせて…小さく微笑んでいるのを私は知ってる
「………いつもは恥ずかしくて無理なだけです」
さらに赤くなる顔を隠すようにますますくっついてくる
「今のエスト、すっごくすっごく可愛いわ!」
「そう言われても嬉しくありません」
「照れてるの?」
「て、照れてなんか…今のルルは意地悪ですよ」
「いつも貴方の方が意地悪だもの」
今はとても嬉しくて、つい意地悪してしまうだけ
「こういう私は嫌?」
「っ…そんな訳ないでしょう!」
「じゃあ、好き?」
いつも私から言うのは、彼からも言って欲しい言葉
「貴女は分かっていて、それを言わせたいんですか」
「もちろん!私は直接エストから聞きたいの!」
他に誰もいない時くらい正直になっていいと思う。
少しの間を置いて、諦めたみたい。
「僕も、ルルが……好きですよ」
「私も大好き!」
林檎のように真っ赤な頬へ口づけた
チュッ
「愛してるわ、エスト」
目覚めた朝を一緒に過ごす。
-大好きな彼へ祝福がありますように-
title by 夜風にまたがるニルバーナ