目を閉じればきみが浮かぶ
真夜中までベッドに座っては、歴史書を読んでいく。別に勉強が好きというわけではない。
ただ、本に記されたモノが示す事を、知るのは嫌いではないから。
本来なら自分なりに考えたりするのに…今ばかりは、まともに内容が頭の中に入らなかった。
もちろん、それはルルのせい
一緒に湖畔で休憩をしていた時に…
「エストのことが大好きよ!」
急に言いだしたかと思えば…
チュッ
微かな吐息が近づいて、次の瞬間には啄むようなキスをされていた
たったそれだけなのに…こんなにも集中力が欠けてしまう自分に、正直驚いてる
クスクスッ
「キス、しちゃった」
「いきなり何するんですか!しかも『しちゃった』って」
「エストは嫌だったの?」
「別に、嫌ではない、です…ルルが突然すぎるから、」
なんだか彼女の瞳が輝いて見えるのは、気のせいにしておこう
「まったく貴女って人は……これで満足ですか?」
「まだ足りないわ!」
「まだ、ですか」
「うん!次は、エストからもキスして欲しいの」
幸せそうに次を願う彼女に、その時は恥ずかしくて僕は出来なかった
確かに貴女との未来を望めることは嬉しいと思ってる
いつか幸せのあまり早鐘を打つ身体は、嬉しさで倒れてしまいそうだなと感じるほどに
「なかなか眠れないのは、貴女が僕を求めてくれるからだ」
贅沢な悩みを抱えて、今日も思い浮かぶのは貴女のこと
目を閉じればきみが浮かぶ。だから今日は、眠れない。
title by 確かに恋だった