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口づけで束縛を

授業も終わって休日をやっと迎えられた。

陽は眩しいくらい部屋を照らしているのに、温まった身体はなかなか動かない。

「ルル?そろそろ起きた方がいいと思うの」

同室のアミィが困ったようにこちらを見つめる。

「アミィ?」

「さっきアルバロさんからパピヨンメサージュが届いたわ」

「………え!?」

バサッ

途端に一気に目が覚めた。ベッドから勢いよく起き上がると私は手櫛で髪型を軽く整える。

いつもは私から送るか、彼の不在で彼からのパピヨンメサージュは少ない。

「たまには不思議な事もあるのね」

不思議というよりあのアルバロだからこそ不安感を煽られる。

「もともと彼は独特だから…」

苦笑いを浮かべて視線をしどろもどろさせるアミィの気持ちもなんとなく分かる。

「それよりもパピヨンメサージュは読んだの?」

「あっ、まだだったわ」

そう言われて薄紫の蝶へ意識を戻す。

-おはよう、ルルちゃん。
せっかくのお休みだからラティウムでデートしよう?
寮の入口で待ってるからね-

「起こしてくれてありがとう!アミィ」

「いきなりどうしたの?」

「アルバロとデートしてくるわ!」

せっかくのお誘いだもの!
時間がもったいないわよね。

バタバタッ

手早く準備を済ませて彼の元へ駆けていく。

「おまたせ、アルバロ!」

「それじゃあ行こうか」

「うん!」

ラティウムへはよく来てるけど、やっぱり彼と一緒の時が一番楽しい。

「今日は何か予定でもあるの?」

「んー、特にないかな」

クスクスッ

「少しだけ待ってて」

明らかに何かを企んでいる。そんな表情で瞳を細めた彼は噴水場に私を待たせて、小さな露店へ向かったみたい。

それから少しも経たないうちにこちらへ戻ってきた。

「右手を出して、ルルちゃん」

「アルバロは何を買ったの?」

「もうすぐ分かるよ」

すごく楽しげに話す彼は私の右手、薬指に指輪を嵌める。

「レーナ・ルーメン…」

「きゃっ!」

指輪を嵌めて突然魔法を使ったかと思えば、光が消えると同時に変化が起きる。何故か周りがとても大きくなったような…

「えっと?」

「すごく可愛くなったね、ルルちゃん」

ニコニコしている彼がこうなった原因。光が消えた時には、私の身体は服ごと小さくなっていた。

「貴方が魔法をかけたせいでしょう!」

「まぁ、そうなるね」

「むーっ」

どう考えたって、今の感じは面白がってる。彼だからこその悪戯だけど、私だけなのはつまらない。

「唇を尖らせて拗ねないの、可愛いだけだからね」

指先でつつきながら、平然とそんな言葉を紡ぐ彼に顔が熱くなる。

「ア、アルバロ!」

「ルルちゃんだって僕に鎖をつけたでしょ?」

「あれは…」

「それにこの魔法は簡単に解ける」

………はい?

「君が俺にキスするだけでいい」

「な、なんで、キス」

そんな魔法の解き方、聞いたことない。

「そういう風に魔法を組んだから」

「今日のアルバロは、いつもより意地悪だわ!」

「それって褒めてる?」
「褒めてない!!」

なんて楽しそうなんだろう
それは見ていて呆れるくらい、ずっと微笑んでいる。

「何処にキスしても戻るわよね?」

「さぁ…ね?」

なんでそんな不吉な目で見るのよ!

「頬にキスするから、アルバロは屈んで」

「はい、どうぞ」

瞳を閉じたのを確認してから私は唇を近づけたのに…アルバロがいきなり引き寄せるから

「え、ま、待っ」

チュッ

唇にキスしてしまった、と同じくして身体が元に戻った。そのまま口元を手で覆う私はきっと真っ赤になってる。

「な、な、なんでこっち向いたの!」

「ルルちゃんが可愛かったから、つい?」

絶対にわざとやったくせに、冗談混じりに言葉を紡ぐ。

「アルバロの嘘つき!」

微笑みを浮かべる彼、その笑顔は真実?それとも仮面を被ってるのかしら?

鎖で繋いだとしても彼の束縛にならない事は分かってる。けれど私にとって小さな行為一つが束縛するだけの力を持ってるの。

それだけアルバロという鎖が断ち切れない檻になったという事

だから彼にも私に夢中でいて欲しい

大切な私だけの鳥籠を壊さない為に


title by たとえば僕が







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