頬を撫でる優しい風。目元を擽る金糸。穏やかな眠りから、静かに意識を浮上させる。
「…ん、…?」
「よぉ、起きたかキラー」
「…キッド…?」
「気持ち良さそうに寝てたなァ」
くしゃり、金髪を混ぜられる。心地良い暖かな掌に瞳が閉じかけ、また眠気が襲ってきた。
「オイ、まだ寝んのか」
「…いや、…すまん、膝借りてたんだな…」
「いいって、別に」
どうやらキッドの膝に頭を乗せて爆睡していたらしい。眩しさに目を細めながら瞳を開くと、真上からおれを見下ろすキッドの瞳とかち合った。
「おはよ、キラー」
「…おはよう、キッド」
目覚めの挨拶を交わして、どちらからともなくはにかんだ。
キッドがひとつ欠伸を溢して目を擦るものだから、その幼い仕草に少し笑う。
「キッドも眠かったんだろ?」
「んー、お前の寝顔見てたらちょっとだけ」
「お前の膝は気持ちが良いからな。交代してやろうか」
「…ん」
気だるい身体を起こして、楽な姿勢で座り込む。キッドを見ながらポンポンと膝を叩いてやると、嬉しそうにキッドは寝転がった。
赤い髪を撫でてやると、心地良さそうに目を閉じる。
太股に感じる重みと、子供のような暖かな体温。図体がでかくても、寝顔は小さな頃から変わっていない。
「…なんか、昔を思い出すな…昼寝ん時、よくお前に撫でて貰ってた」
「今も昔もお前は変わっていないがな」
「るせ、…キラーの手は気持ちいンだ」
擦り寄ってくるキッドの頬を擽りながら、おれは微笑んだ。
「…キッドがそう言ってくれるのは、とても嬉しいな」
昔と違って幾多の命を奪った掌だけれど。
それでも、お前が良いと言ってくれるなら。
「おやすみ、キッド」
「…おやすみ、キラー」
波は穏やか、風は陽気を含んでいる。
暖かい午後の陽を浴びて、おれはまた微睡んだ。
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キッドくんに膝枕されたいのは私です。
親友以上、でも恋人じゃない距離感。
(20120405)