おれの腹に這わせていた手をふと止めて、トラファルガーが呟いた。
「…なぁお前、ボディピアスとか開けたりしねぇ?」


「あ?どこにだよ」
「臍、とか」
トラファルガーの人差し指が、つ、とおれの臍をなぞる。少しくすぐったい。


「…なんで」
「この前陸に上がった時な、お前に似合いそうなの見付けたんだ」
赤くて紅くて緋いんだ。くつりと笑ったトラファルガーに、ふぅん、と返事をする。


「見たい?」
「…まあ」
折角おれに似合うとこいつが選んでくれたのなら、見てみたい気もする。


ベッドから手を伸ばして、サイドテーブルの引き出しを開く。
白い小さな箱に仕舞われていたそれは、小さいけれど存在感のあるルビー。
光に透かせば、緋色に輝いた。


「…綺麗だな」
「だろ?」
トラファルガーは大切そうにピアスを撫でて、箱に仕舞い直す。


「…あァそうだ、おれが開けてもいいかもしれねぇな」
「臍にか?」
「いや、舌に。そしたら、ユースタス屋食ってるみてぇで興奮するかも」
「……」
舌舐めずりするトラファルガーに、眉をしかめてみせる。


「そんで、その舌でお前とキスするんだ。おれとお前の唾液にまみれて、きっと綺麗なんだろうな」
「…引っ掛けたら痛そうだな」
「ふふ、怪我したら舐めて治してやるよ」
べ、と舌を出したトラファルガー。それに溜め息だけを返せば、つれねェなと先程の小箱を押し付けられた。


「なんだ、お前が付けんじゃねぇのか」
「ユースタス屋に買ったんだ。好きにしろ」
「……じゃ、やっぱお前が持ってろ」
ぐい、と押し返す。不満そうな顔のトラファルガーに、いいから、と小さく言う。


「あ?なんで」
「お前が付けろ。…まぁ、舌は止めといて欲しいけどな」
「なんでって聞いてんだよ」
「…お前に、似合う」


その赤色は。おれの色は。
お前に映える。


「…独占欲?」
「はァ?」
「俺色に染まれ、ってことか?」
嬉しそうなニヤケ面に苛立つ。が、実際そういう意味になるのだから仕方無い。


「わかった、コレはおれが付ける。今度お前にもうひとつ買っておいてやるよ」
「…念のため聞くが、何色を?」
「おれの色。青灰色、ダークストレートブルーとか?」


まるで普通の恋人同士みたいだな、と。
今更なことを言うのは野暮だろうか。


トラファルガーの言葉を、少しでも嬉しいと思ってしまったから。


「…楽しみに、しとく」
だから、そんな恋人みたいな返事しかできないのだ。


****
ピアスは萌えの塊。


(20120404)


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