#ふぁぼしてくれた人に文章テロを仕掛けますD【安清】





「俺のこと可愛いって言わないの、お前だけだよね」
 ふぅ、と指先の紅を吹きながら清光がそう漏らすと、背後で何やら書物に目を通していた安定がひとつ溜息をつく。
「言ってほしいの? 僕に?」
 チラとこちらに目をやって、じゃあ言ってあげようか、なんてそんな返しをしてくるものだから、清光は口元をへの字に曲げた。
「強制的に言わせるんじゃ意味ないんだって」
「……自発的に言ってほしいわけ?」
「まぁ、そういう感じ」
 実際問題安定が清光のことを心の底から可愛いと思っていてもいなくても、どちらにしたって清光はその言葉を欲しがっただろう。嘘でもいいから言ってよなんていうのは清光のプライドが許さないけれど、それでも安定だけがというその事実だけが許せないから困る。
――なんで許せないのか、考えてるとよくわからなくなってくるから、それもちょっと、困ってるけど。
 煽ったって何したって、言ってくれないものは言ってくれないか。清光の顔をじっと見つめたまま反応のない安定に「やっぱりいい」と口を開こうとしたところで、こちらに近寄ってきたそいつに手を取られて驚いた。
「な、」
「……うすっぺらいから嫌いなんだよ。言葉っていうのはさ」
 伝えるんならもっとわかりやすい方法がいくらでもあるでしょ。そう言って塗りたての紅から少し外れたところをそっと安定が啄ばんだ。腰のあたりから首筋までぞわぞわとした感覚が這い上がって、指の隙間からチラついた安定の目に下唇を噛む。
 そうしてパッと離された指先が、じんじん痺れてくすぐったい。――結局言ってくれないじゃん、なんて顔を背けるので精一杯になってしまって。




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