お題:歳の差





 図体ばかりでかくなったそいつが、ドアを閉めるなり覆い被さってきて余裕のないような顔でキスを仕掛けてくるものだから驚いた。震える唇でガチガチのキスをして、それから詰めていた息を吐き出し俯いて呟く。

「大人はずるいよね。すぐになかったことにするし、都合が悪いと知らないふりするじゃん」

「……そうだな」

 肯定すれば、睨むような視線と目が合って。

「おじさんもずるい大人の仲間でしょ。おれとのこと、忘れてたみたいな顔してさ」

 言って、それからすぐに顔を伏せこちらの胸に額を押し付けた。上着の布地をぎゅうぎゅうと握り締めるそいつを見下ろして、オレは小さくため息をつく。


――そうは言うけれど、実際ずるいとはどっちだろうな。
 記憶を抹消して覚えてませんって笑うのはお前の方なんじゃないかって、そんなことに怯えている自分がいることが……心底情けないから困る。





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