2011/10/14 センチメンタルな季節によせて2 ------------------------ お題は、「公園で男女一組が別れ話をしている場面を描写せよ、」です。 物悲しい気分になる季節、 破局する二人でも結構、一方的でも結構、センチメンタルなんてひっくり返してやるぜ! という強者も結構。 描写を楽しんでくれれば、と思います。 文字数:300〜400文字 注意:@雰囲気を出すことに注力すること! A設定の面白さに頼ろうとしてはいけない。 今回は@を達成するようにできたらと思います。 同じ作風になるのではという不安はいらないと思われます。 各々書けばきっと、違う味がでる描写となりえると思いますので。 ---------------------------------- 鼻をくすぐる風が、秋なのだと告げていた。 それは時折強く吹いて彼の目を刺激し、 何度も瞼を落とさせる。 木製のベンチ。 枯れた茶色の芝。 黄色い銀杏の木に、 紅の楓。 見慣れたはずのこの風景が 酷く悲しく映る。 一人分のスペースを開けたままでベンチに腰掛け、 彼は落葉を眺めていた。 彼の空いた右側を、冷たい風が通り過ぎて行く。 そこには先刻、彼女が居た。 さようなら、と おそらく彼女はそう言った。 誤魔化すように唇を重ねてきたから 彼女の口元が読めなかった。 何故だか耳の奥が きん、と鳴っていて 好きだったはずのあの声が、まともに聴こえずにいた。 …でもそれでよかったのかもしれない。 波のように押し寄せる風が あの落葉たちを攫っていくように 彼女もまた、秋風に連れていかれてしまった。 多分、それだけのことだ。 彼の頬に流れる一筋の光さえも 消し去ってしまおうとする雁渡し。 しかし光はいくつもの粒となって、 零れては土に還っていった。 前へ 次へ |