2011/10/10 センチメンタルな季節によせて


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お題は、「公園で男女一組が別れ話をしている場面を描写せよ」です。

物悲しい気分になる季節、
破局する二人でも結構、一方的でも結構、センチメンタルなんてひっくり返してやるぜ!
という強者も結構。

描写を楽しんでくれれば、と思います。

文字数:300〜400文字

注意:@雰囲気を出すことに注力すること!
   A設定の面白さに頼ろうとしてはいけない。

今回は@を達成するようにできたらと思います。
同じ作風になるのではという不安はいらないと思われます。
各々書けばきっと、違う味がでる描写となりえると思いますので。
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ひやりとした風が頬を撫でる。

夕方の公園には、先ほど帰りを告げるチャイムが鳴り響いたからか
いつもの子供たちの姿は無い。


(―…こんなところまで来ちゃったな……。)


ケータイを持っていると
彼女からの電話がかかってくるような気がして。
電源を切っても、家の電話が鳴る気がして。
電話線を抜いても、訪ねてくるような気がして。

気がつけば、家から随分離れた公園まで
財布もケータイも持たずに歩いて来てしまっていた。

けれどその静まり返った公園は今の自分を慰めてなどくれない。
むしろざわざわと鳴る木の葉の音が
その不安と恐怖が入り混じった感情をどんどん膨らませていくだけだ。

ここにいても仕方がない。

そう思い、踵を返そうとした途端
ベンチに腰掛けている一組の男女が目に入った。

おそらくカップルだろう。
こんな気分なのに仲睦まじい姿など見せつけられたらたまったものじゃない。

しかしその2人の雰囲気は、
どうやら恋人同士にしてはぎこちないように見えた。


(―…別れ話の最中、か?)


いけないとは思いつつ、聞き耳を立ててしまう。
風のざわめきではっきりとは聞こえないが、やはりそのようだった。

眉をひそめた女が、何かを必死に訴えかけている。


(―…俺も……明日とか…明後日とかに…
あんな顔を見ることになるのかもしれない……。)


全部聴いてしまうのはマズイと思って
音をたてないようにその場を離れて行く。

その時、自分が動くと同時に女の方も立ち上がった。
そして男に握られていた手を、そっと解いて歩き出す。

女に見つからないように物陰に隠れながら、
何故か自分は男のその後を見守っていた。

暗闇に溶けてしまいそうな
黒のジャケットを身にまとったその男を。

彼女が見えなくなったころになって、
やっとその男は宙に浮かせていた自らの手の平に
視線を落とした。

そして一回、感触を確かめるように握った後
その手の平で顔を覆って俯く。

肩が震えているように見えた。


彼は多分、未来の自分だ。

このままでいたら、その未来はいつかきっと訪れる。


(―…帰らなきゃ……)


落ちる夕日に急かされるように
踵を返した足がだんだんと速度を上げて行った。





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