2011/09/13 花火



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テーマは「花火」
天空に咲く花火を見つめてもいいですし、
内輪仲間でわいわいやる花火も、
大勢でたまや〜でもいいですし、
一匹狼派で、夏を名乗り惜しむのさという一人花火も良いですね。
なんでも良いです。どうぞ!

字数:450字に致します。
努力目標です。

始まり:台詞で
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「あ…落っこちちゃった…。」

ふっ、と辺りが黒に染まる。


「もう一本ちょうだい。」
暗闇の中から小さな白い手が伸びてきた。


私はその言葉に従って線香花火を手渡す。


受け取ったその手は、待ちきれないと言わんばかりに
花火を蝋燭に近付けていった。

火傷するなよ、という私の警告は
おそらくこの子には聞こえていない。


じゅ、という音がした。

次いで、たくさんの小さな光の粒が
その先端から尾を引いて飛び出す。


ぱちぱちぱちぱち…
互いがぶつかりあっては弾け飛ぶかのように。



「…たんぽぽ。」



「…え?なんで?」

薄い唇から唐突に発せられた
場にそぐわない単語の意味をはかりかねて、
思わず聞き返す。

「たんぽぽの綿毛みたいだね。」

そう言って彼女は無邪気に笑った。


「あと、こうやって振ると雨みたい!」


言いながら、その手を左から右に振って
光の筋を撒く。


「そんで線香『花火』だし…」


そのつぶやきの意図を探りつつ、
花火が消える瞬間をねらって新しいものを渡す。


「この色は、もみじ。」


ね、と小首をかしげてきた。

私は相槌を打つ。


「それでね、最後は…ほら見て。」

彼女は弾け飛んだ橙色の光の末端に注意を促す。


「…雪の結晶。すごく似てる。」


そう言って彼女はくすぐったそうに笑った。


だんだんと夏の結晶は溶けていく。

音もなく闇に溶けていく。



「あ…落っこちちゃった…。」


ぽってりとした光の塊が地面に落ちた。


それが私にはまるで朧月に見えた。




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