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季節は夏――――
只今、夏の風物詩_夏祭りにきております。
なのに。
「雲雀さん本当に全部の屋台から売り上げ強奪するんですか」
「人聞きの悪いこと言わないで。
風紀委員への寄付だよ。
それにここは僕の縄張りだ」
雲雀の手伝いをさせられていた。
仕事内容はこの夏祭りで屋台を出している所全てからショバ代と称して巻き上げたお金を持って雲雀について行くという内容である。
支払いを拒んだら屋台を潰すという居心地が悪い上にお金の管理という責任重大な仕事だ。金勘定は地獄の仕事でなれているが。
「普通に満喫したかったんだけどなー
なんでこんなヤクザまがいなことしてるんだろ……」
どうして雲雀の付き添いをすることになったのか。
それにはこんな経路があったからである。
――2時間前。
名前は地獄で茄子達と一緒に買い物に行ったときに買った、金魚草がワンポイントであるチャイナ服を着て夏祭りに来ていた。
そしてひたすら金魚すくいをしていたのである。自分が着ている着物の柄のプライドに懸けて本気で取り組んでいたらいつのまにか店主を泣かせていた。
金魚は金魚草が家にありふれているのと、流石に店主が可哀想と思ったので3匹だけ持って帰ろうと袋につめてもらっていた。
金魚を受け取り、次はだるま落としを極めようと思って立ち上がった時には金魚すくいにスゴいチャイナ服の女の子がいるという噂を聞きつけた雲雀が目の前にいた。
そして今に至る。
「(一通り振り返ってみたけど悪いことなにもしてないじゃん!寧ろ良い人(鬼)してるじゃん!)」
名前は自分の現世での悪運の強さに溜め息をついた。
因みにヴァリアーは花見から帰ってきたときには豪華になった部屋を残して跡形もなく消えていた。
置き手紙によるとイタリアに呼び出されたので行ってくるということだった。
「ねぇ、歩くの遅いんだけど。追いかけっこでもして欲しいわけ?」
いつのまにか距離が開いていたのか、少し離れた所を歩いていた雲雀が立ってこちらを振り返っていた。
「追いかけっこはパスで……」
名前は心の中で溜め息をつき、ずれていた風紀委員の腕章を直してから雲雀との距離を縮めた。
ちなみに並盛最強である雲雀とチャイナ服の風紀委員少女が一緒に歩いているということで周りの人々からは遠目に見られている。
脅迫してはお金を巻き上げるという行為を繰り返していると、聞き慣れた声が聞こえた。
声の主を探してみるとそこにはツナ達がいた。
「うそーっっ名字さん!?
何してるの!?」
「こんばんわーっ
今このツリm………もとい雲雀にお手伝いさせられてまーす☆」
「そういうこと。だから5万出して。
じゃないと潰す」
風紀委員最強伝説。なのである。
_____
「取り敢えず、これで一通り回りましたね」
「フン、小動物のクセに僕に逆らうなんて」
(理不尽だよなー。鬼灯さんと良い勝負。
でも鬼灯さんの方が上かな?)
名前たちは全ての屋台をまわり、山の中で休憩していた。
風紀委員の活動をしながら、ちらほら名前が行きたいと言った屋台にもよった。
しばらく腰を下ろして休憩していると名前の耳に少し離れたところから乱闘音が聞こえた。
雲雀にも聞こえていたようで、彼はいたずらっぽい笑みを浮かべると
「ふん。ちょっと遊んでくるよ」
と言って音のする方向へ行ってしまった。
取り残された名前は先程のお金を雲雀が置いていったのを見て、渋々後を追いかけた。
______
「えー」
雲雀に追いつくとそこは緊張感が広がっていた。
雲雀を初めに、今にも戦いが勃発しそうな勢いだった。
「(雲雀さんは相変わらず孤立ですかー
ていうかガングロ率高い!いかにもチャラい雰囲気だ!!)」
名前は傍観者になっていたが、名前だけの平和は許されなかった。
「んぁ?ここにかわいい嬢ちゃんがいるじゃねぇか」
「おっまじかよ!
ひょえーチャイナじゃねぇか!
スリットがエロいなぁ!」
「えっ名前ちゃん!?
ここにいたら危ないよ!早く逃げて!」
「ムカッ(あちゃー気付かれちゃったか。あいつらホントにキモイ。それよりなんでこっち睨むんですか雲雀さん)
はぁ。。。
はいはい、私も飛び入り参加しますよっと」
雲雀の視線に耐えかねて名前は荷物を置いた。
「雲雀さーん!!取り敢えずお金だけは守っときますよ」
「ふん。当たり前じゃない。一瞬でも奪われたりでもしたら咬み殺すよ」
「かわいいこちゃん、ケガしちまうぜ?」「そんなことよりあっちで俺らと遊ぼうや」
下心丸出しのチャラ男が名前に近づいてきた。
「うるっさいっ!近付くなヘンタイ!」
そんな奴らに名前は華麗に回し蹴りで応酬。軽く2人吹き飛ばした。
「うっ…いってぇー」
「てめぇ!よくも俺の顔を!」
「あんたらの顔なんて拝む気さらさらないわよ!!
あとそのセリフ言うなら白鐸より綺麗な顔持ってきて言え!」
「はぁなんだと!?
小娘なんざ囲んじまったらこっちのもんだ!
囲め!」
「舐めるんじゃないわよ!!あんたらみたいな格下、いくらいたって負けないわよ!」
売り言葉に買い言葉。すぐに一対多数の戦いが始まった。
男たちは名前を囲んでいくが名前は死なない程度に力を抑えて華麗に足技を決めていく。
全てを片付けるのに時間はかからなかった。
名前の周りには気絶した男共で溢れかえっていた。
「ふん。あんたら何かに本気を出すまでもない。武器さえ必要なかったわ」
「へぇ。じゃあ今から僕とやり合おうか。」
「…………………へ?」
名前が軽く服をはたきながらそう言うと後ろには先程の乱闘で勝利を収めた雲雀がいた。
いつの間に駆けつけたのか、ツナの後ろには獄寺と山本もいる。
「というか名前ちゃん……言葉使い………」
「ん?ああ。標準語標準語。
本当はね。
それより怪我はないの?」
「ボクたちは平気だよ!
それより名前ちゃんてスゴい強いんだね……」
「いやぁ、それほどでも!
まぁ、昔(何千年)から鍛えてるからね」
「僕を無視して話すなんて小動物のくせに良い度胸だね。
なんでもいいからやり合おうっよっ!」
雲雀は名前の正面にトンファーを振り下ろしてきた。
それを動じることなく腕で受け止めた名前は雲雀の手にお金の入った封筒を渡し、
「もう集金は終わったので帰っていいですよね!帰りますよさようなら!
(ヤバい、少し人間離れした動き取っちゃったかも!
それよりも何よりも、、、、、
金魚早く水槽に入れてあげなきゃ!)」
名前は全力疾走で帰った。早すぎて雲雀の目でもっても瞬間移動したかのように見えた。
「(名前………僕のトンファーを片手で簡単に受け止めた。
それに今の足の速さ…………
ホント、何者なんだろうね。
全く……興味が尽きないよ)」
「うそー!!名前ちゃん早い!」
「ははっ雲雀より強いのな!」
「や、山本!雲雀さんの目の前で!」
「僕はもう集金も終わったし、ひったくりも咬み殺したから帰る」
「アイツマジで何モンなんだ?」
更に疑問を生んだと微塵も思わず、名前は必死に鬼灯向けに報告書をしたためた。
______
鬼灯さんー!!
少しはしゃいじゃいました!!
ゴメンナサイ!!
______
_はぁ。。。
何なってるんですかね本当に。
まぁ彼女ならどうにかするでしょう。
鬼灯くん!休憩にする?
そうですねそうします。但しお前は働いとけ達磨ヒゲ。
理不尽!!
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mokuji