「それでは、次は伴奏者を決めます」

伴奏者はきっとライバル*名前ちゃんで決まりだろう。

先生の言葉と同時に、そう思った。
去年の合唱コンクールでも、ライバル*名前ちゃんは伴奏者賞を貰ってたし。
ライバル*名前なら皆文句なしに賛成するはず。

だけどそんな私の考えは、次の先生の言葉であっさり打ち砕かれた。


「伴奏者はピアノ経験者の中からオーディションで決めます。経験者は起立して」


―……え?

自分の耳を疑った。
オーディション!?去年は確か、推薦だったハズなのに…
クラスの皆も、少なからず動揺したらしく、ざわざわと騒がしくなるクラス。

だけどガガガ…と椅子の動く音がして、ライバル*名前ちゃんも含めた数名が立ち上がった。
合計、4人。

「これだけですか?」

友達*名前がしきりに目配せしてくる。
だけど私は、どうしても立ち上がる事が出来なくて。


「それじゃあ今立った人は…」
「先生」
「ん?どうしたの?」
「名字もピアノ習ってます」


へっ……!?

えええっ!?


不意にそう言ったのは…伊月くん。

「えっ、伊月く…」
「あらそうだったの。じゃ、名字さんも立って」
「…あ、はい」

先生に言われるがまま、ゆっくりと立ち上がる。
ふと、伊月くんと目が合った。

伊月くんは、にっこりと笑ってた。

その表情から、伊月くんの考えは読み取れなかったけど…


「それじゃあオーディションの課題曲の楽譜を配布するわね。オーディションは再来週の月曜日よ」

私の右手には、オーディション課題曲の楽譜。


何で今年はオーディション形式になったのかなんて分からない。
ただ皆と一緒に歌って終わると思っていた合唱コンクール。

その前に、少しだけ想定外の事が起きてしまった。









06


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