「ライバル*名前…」
「俊…ちょっと良いかな?」
「…リョーカイ」

何かを察したように、保健室を出て行く伊月くん。
それと入れ替わりに保健室に入ってきたのは―…

…―ライバル*名前ちゃん。



「足の具合はどう?」
「…大丈夫。ライバル*名前ちゃんは?」
「あたしは平気。…どこかのお人好しさんのおかげでね」

意味深な表情を浮かべて私を見るライバル*名前ちゃん。
言葉を交わしたのなんて、ものすごく久しぶりだ。

「ありがとう…と、ごめん」

ぽつりとライバル*名前ちゃんが呟いた言葉。

いつものライバル*名前ちゃんとは、何だか違うような気がした。


「ライバル*名前ちゃん……?」
「あたしね、俊にフラれたんだ」
「えっ!?」

ライバル*名前ちゃんの突然の言葉に、思わず大声を出してしまった。

フラれたって…嘘でしょ…

「もう知ってると思うけど、あたし俊に告白したの」
「うん…」
「…で、さっき返事貰ったの」
「嘘…」
「あたしとは付き合えないって」
「嘘!そんなの嘘だよ!伊月くんがライバル*名前ちゃんの告白断るはずなんて…」
「…ううん、全部ホント。俊は見抜いてたのかもしれないね」

ライバル*名前ちゃんはそう言ってから、ゆっくりと私の方を見た。


「見抜いてた、って…?」
「あたし、本当は分かってたんだ。名前ちゃんの気持ち」
「えっ…」
「同じ立場って分かってて、名前ちゃんにあんな酷い事言ってたの」

友達*名前が言った通りだよ。
そう言ってライバル*名前は、自重気味に笑う。

「妬いてたんだよ…名前ちゃんに」
「そんな…」
「だから…ごめん」


複雑な気持ちだった。

「ライバル*名前ちゃん…ライバル*名前ちゃんが全部悪いんじゃないよ」

ライバル*名前ちゃんの気持ちを既に知ってたのは、私だって同じだ。
だからライバル*名前ちゃんに謝られる資格なんて私にはないよ。


「とにかく、あたしはもう俊の事は諦めるから」
「そんなっ…」
「その代わり!俊に何かあったらすぐ奪うからね」
「…何それ…」

恋に破れたライバルみたいなセリフ。
そのライバル*名前ちゃんの言葉に、思わず苦笑してしまった。
私の様子を見て、顔をしかめるライバル*名前ちゃん。

「おかしいセリフ…とか思ってんでしょ」
「うん…だって」

恋のライバル―…同じ人を好きになったって点では、確かにそうかもしれない。
だけど…

「私がライバル*名前ちゃんに勝てる訳、ないもん」

「バカね。あたしが何て言われてフラれたか知ってる?」
「え…?」
「“好きな人がいる”って。そう言われたの」
「……ええっ!?」

ライバル*名前ちゃんによる爆弾発言のせいで、また大声を出してしまった。
まさか伊月くんに、好きな人がいたなんて…

「それ…ライバル*名前ちゃんじゃないの?」
「もしそうだったらフラれてないでしょ」
「そんな…」

ズン、と気分が重くなった。
ライバル*名前ちゃんじゃない、伊月くんの想い人…

「誰、なのかな…」
「…本当にバカだね」
「え?どういう事?」

だけど私の質問へは答えずに

次の瞬間―…ライバル*名前ちゃんの右手が、私の目の前に差し出された。

「仲直りしよう」
「ライバル*名前ちゃん…?」
「今までごめん。そして2回も助けてくれてありがとう。これからも…よろしくね」

ふわりと笑ったライバル*名前ちゃん。
…やっぱり、可愛いや。
それと同時に、私の方まで笑顔になって。

私も右手を差し出して、ライバル*名前ちゃんの手を取った。

「…こちらこそ」


やっと心の底から、ライバル*名前ちゃんと分かり合えた気がした。








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