―…目が覚めた。 真っ先に目に入ったのは、真っ白な天井で。 ……ああ、私生きてたんだ。 「名字!」 そんな事を考えると同時に頭上から降って来た声。 視線を移せば… 「伊月くん…」 私が寝ているベッドに寄り添うようにして私を覗き込む、伊月くんの姿があった。 思いの外近距離で心臓が大きく踊る。 私と目が合うと、心配そうに眉を寄せる伊月くん。 「名字、大丈夫か?何ともない?」 「うん、大丈夫…」 そう言えば、伊月くんは本当に安心したようにふーっと息をついた。 「漫画みたいな話だけど…名字が落ちた下に植え込みがあって、奇跡的に助かったんだ」 「…そう、だったんだ」 周りを見て、ようやくここが学校の保健室だと気付いた。 あんまり大事にはならなかったんだ…良かった。 「ごめんな名字」 「え?」 突然の言葉に伊月くんを見るけど、伊月くんは下を向いてしまった。 しばらくして、ようやく顔を上げる。 「…守れなくて、ごめん」 絞り出すような声だった。 「名字が屋上から落ちた時、オレは何も出来なかった」 「何言ってるの!」 そんなの、伊月くんが気に病む事じゃないのに。 勝手にライバル*名前ちゃんを助けたのは、私なのに。 やっぱり伊月くんは優しいんだな…なんて。 こんな時に不謹慎かもしれないけど、そう思っちゃうよ。 「気にしないで。結果的に大丈夫だったんだし」 「ああ…」 伊月くんの顔を見て、ホッとして。 その瞬間だった。 ふっと脳裏に、ライバル*名前ちゃんが浮かぶ。 そう言えばこの場に、ライバル*名前ちゃんがいない… ライバル*名前ちゃんはどうなったの!? 「ライバル*名前ちゃんっ!」 思わず飛び起きた。 …同時に右足に走る激痛。 「痛ッ…」 「名字!」 あまりにもの痛みに立つ事は叶わず、ぐらりと傾く体。 「大丈夫か?」 気付けば私は、伊月くんの腕の中にいた。 その途端右足の痛みなんて感じなくなって、頬がカアッと熱くなる。 瞬時に伊月くんからパッと離れた。 「ご、ごめっ…」 「言い忘れてた…右足は捻挫したみたいなんだ」 「あ、そうなんだ…」 まだ頬の熱が収まらない。 だけどそれも、伊月くんの次の言葉で吹っ飛んだ。 「…ライバル*名前は無事だよ」 「ホント!?」 「ああ。ライバル*名前は完璧に無傷だったんだ」 「良かった…」 ライバル*名前ちゃん、無事だったんだ。 そう思ったら、体の力が抜けた。 保健室のドアが開いたのは、その時だった。 23 [戻る] |